操り人形
ふと声がしたほうをみると小さな女の子がいた。
その子は私よりも小さい幼い子だった。
小さなその手にはクマのぬいぐるみをもって裸足のまま後ろから月明かりに照らされて立っている。
でもなぜだろうか。
普通の少女には思えなかった。
この子は本当に少女なのだろうか。
すると少女はこちらに向かって歩き出した。
その途端、異様な空気が辺り一面に広がった。
冷汗が止まらない。
今までこんなにも恐怖を感じたことがあっただろうか。
その場から一歩も動けない。
指先一つ動かせない。
目の前の少女から物凄い魔力を感じる。
自分には勝てるわけないような魔力だ。
指先が、足が、全身が恐怖で震え、毛が逆立つ。
「…お姉ちゃん凄いね、私、お姉ちゃんみたいな強い人初めてあった。誰もレイナのお人形になってここまで魔力に堪え切れた人いないもん。みんな途中で耐え切れなくなって破裂して死んじゃうのに…」
目の前の少女は一人で感心したようにつらつらと話し始めた。
その顔は影に隠れていてあまり見えないが話し方からして楽しそうだ。
「でも残念、この国の人、みんな殺せって言われちゃったんだよね。せっかく丁度いいレイナのお人形を見つけたと思ったんだけどなぁ…」
「おもちゃ…?」
「うん。レイナはね、このくまさんを使って人間を操ることができるんだよ。たとえそれが魔界人であっても肉でできているなら誰でも操れるの、それでね、レイナのお人形になった人はその人の本来持っている能力以上の力を発揮することができるの。ね。すごいでしょ。」
少女はそう言いながら抱きかかえているクマのぬいぐるみを自慢げに私の方にみせてくる。
しかし、私にはそのぬいぐるみを直視することができなかった。
そのぬいぐるみに見るなとでもいわれているような、そんな気がしてならなかった。
「因みにね…操っている人間のことをこんなふうにすることだって、できるんだよ。」
そう言うと、少女はクマのぬいぐるみの左腕を内側にゆっくりと回した。
するとどうだろうか。
私の左腕もクマのぬいぐるみと同じ方向にゆっくりと回りだした。
「ひっ…ィダァッ…⁈ィ゛ヤ゛ァァァ゛……!」
痛い。折れる。痛い。
少女はそんな痛がっている私の姿をみて楽しそうにクスクスと笑って更に内側へ腕を回した。
「あ゛あ゛ぁ゛ァ゛ァッ…………!!!」
絶叫がその場に鳴り響く。
ボキッ…っと醜い音がきこえた。
すると少女はあーぁ、つまんない。とでも言いたげな顔をしてクマのぬいぐるみの腕を離した。
それと同時に私の左腕も解放され、私は折れた左腕を優しく抑え込んだ。
痛くて痛くて目から大粒の涙が溢れる。
視線をチラッと少女に向けると少女はとても楽しそうに静かにして笑っていた。
勝てる気がしない。
自分よりも幼いはずのこの子に。
負ける気しかしない。
一体どうやってこの子に勝てばいいのかわからない。
ねぇ、まま……アオ、みんな。
うち、どうすればええかな……?




