10月末 『小説執筆マニュアル』
とにかくこれを読めば絶対に小説を書ける!
もし書けなかったら
・『原稿用紙に文字を書く』
これは一番大事だ。
何しろこれが出来なければ小説は書けないからだ。
人間は書くことで見えない自分の中の何かを呼び起こす。
文字だろうと絵だろうとそのなにかが人間の味というものになる。
そしてマス目の中に絵を描いて、これも小説だということは出来るかもしれない。
しかし印刷屋さんが苦労をする。
こっちはもっと苦労したんだ!と訴えたくもなろうが、報われるべきでない苦労もあることを教えてもらうべきだ。
こういうことがあるので原稿用紙には絶対文字を書かなければいけない。
ひらがなでも漢字でもカタカナでもとにかく書かなければいけない。
これが小説を書くための基本マニュアルの第一歩だ。
・『小説を書くときは、小説を書かなければいけない』
これも大事だ。
小説を書くときに小説を書かなければ小説は書き上がらないからだ。
たとえ間違っても小説を書いているときに漫画を描いてはいけない。
小説を書きたくても書けない人というのはきっと知らず知らずのうちにそんな非常識なことをいつの間にかやっているにちがいない。
ようするに集中力がないのだ。
小説を書くときについつい漫画を書いてしまう人はいっそ漫画家になったらいい。
そこで漫画を描きながら小説を書いたらいいのだ。
これで小説を書きながら漫画を描いてしまうという非常識な行動は解決する。
・『小説のプロットを考えるときは小説のプロットを考えなくてはいけない。』
これはさらに大事だ。
小説はプロットが大事だ。
しかもプロットが書ければ小説を書けたも同然らしい。
じゃあプロットだけで出せばいいのではと思ったが、そう甘くはないようだ。
プロットだけで成立してる小説というものに、プロットの枠をはみ出して小説の生気たる何らかが、一切ない、存在せずという可能性が出て来てしまったらどうするつもりなのだ。
そして次にプロットがただのイベントのスケジュールであると思われてしまえばどうするつもりなのか。
この起承転結にただ乗っ取っただけのプロットを見てほしい。
これのどこに面白さがあるというのか。
起…セックスをしてしまう
承…セックスをわかり始める
転…セックスの意味が変わる
結…セックスをしてしまった時のショック溢れるセックスに戻り、魔王が倒れ世界に平和も戻る。
・『小説の人物は、やたら跳び跳ねてはいけない』
これはかなり大事だ。
なぜなら小説の人物がいつも跳び跳ねていたら、いつも地の文に人物が跳び跳ねていることを描写しなければならない。
幸洋は跳び跳ねて彩子にプロポーズし、彩子は跳び跳ねて断った。
幸洋は跳び跳ねて悔しがった。そして彼女の見ている前で用意した指輪を跳び跳ねながら投げ飛ばした。
指輪が彩子の頭上を越えて地面に落ち、キィンと音を立て、跳び跳ねると、どういうわけか跳ね上がっていた彩子の方に戻ってきて、
生きているかのように不思議と彼女の指に収まった。
彩子は今の出来事を跳び跳ねながら受け止めた。そしてそれが気持ちを変えた。
跳び跳ねながら二人の言葉は交わされた。
「い↑い↓わ↑よ↓」
「えっ↑ほ↓ん↑と↓う↑↑↑!」
なんとも酷いこういうことになる。
人物をひたすら跳び跳ねさせることなど言語道断の表現である。
もしこのような表現をする作家がいたとしたらよほどの天才か天才に極めて近いバカかのどちらかだろう。
・『小説を書くときは書こうとしたことは実はそんなに書かなくてもいい』
これはわりとものすごく大事だ。
小説を書くときは書こうとしたことを書かなければいけないとあなたは思っていないだろうか。
小説を書くときについうっかり自作の歌詞を書いてしまったりする人をよく見かける
この人は小説を書く気がないのだろうか?
それは違う
むしろこの人は小説を書いたのだ
自分の小説を
小説というものを書くには、小説と呼ばれそうなものを書かないのが一番なのだろう
だから、小説とはそういうものだと思うことにする方が楽なのだ




