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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第三章・トラジオンのカリギュラ
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都督府にて

トラジオン中央城塞都督府にてエーリカはチコの魔法使いとしての申請の手続きを行っていた。

必要な書類などを揃え、都督と筆頭官二人の元に向かう。

と、技官として在ったが故に文官の区枠が近い為、筆頭文官のエイトリの執務室に入った。


「失礼します、筆頭文官どn」

「おなごの匂いじゃー!ぶぎゅ!」


そして素早く戸を閉めてとびかかるエイトリを防いだ。


「な、何ですか筆頭文官殿!?」

「た、頼む!髪の毛!髪の毛一本で良いからおくれ!糸ようじ代わりに大切に使うでな!」

「絶対嫌です!というかふざけないでください!」

「ワシは大真面目じゃ!先ごろの罰としてオエコラフとヴァインがワシを執務室から出れぬよう仕事を次から次へとでの!もう三日もおなごにタッチしとらんのじゃ!」

「何をやってるんですか……」


頭痛を抑えながらも取り敢えず持ち直し、代わりに廊下を歩いて来たドラコニーが話しかけて来た。


「おや、エーリカ一級技官、どうしたのかね?」

「これは、ヴァイン筆頭武官殿」


ヴァインは扉の向こうから響く怨嗟の声を聞いて一瞬恐ろしい表情を浮かべる。


「ほう、未だ足りませぬか。結構、都合良く都督閣下より新たな仕事を預かっておりますぞ」

「ひぃ!?お、御主らよってたかって年寄りをいじめよって!ヴァインよ!御主には良心は無いのか!?」

「良心的でしょう、机に括りつけなかっただけでも」


再びさけび声の響く執務室脇の小窓から木簡の束を入れ、ヴァインはエーリカに向き合う。


「して、如何なる用件か?見ての通り筆頭文官殿は忙しい。私で良ければ代わるが」

「あー……そうですね。筆頭武官殿にも承知して頂かねばならない事ですし」

「どれ…………これは…………!」


受け取った羊皮紙に書かれた新たな魔法使いの保護承認。

その名前を見てヴァインは目を見開く。


「確かかね?」

「はい。私自身結界魔導を発動した場面に居合わせたので」

「…………」


苦虫を噛み潰したような表情のヴァインはやがてエーリカに向く。


「承知した。この書類は私から筆頭文官殿と都督閣下にお渡ししておく。正式な承認書は追って君に渡そう。引き続き精霊殿の監督を頼むぞ」

「はっ」


その返答を受け取り、エーリカは踵を返して去って行った。

エーリカの姿が見えなくなるとヴァインは深い溜息を吐いた。


「…………何故平和に暮らさせてはやれんのだ」


そこから漏れたのは弱音だった。

自らの顔に手を当て、心底苦痛だというようにかぶりを振るう。

と、木簡を入れた小窓からマジックハンドの様な物が伸びて来て羊皮紙をふんだくった。

そしてエイトリの荒い呼吸音が響く。


「すーはーすはすはすはすはすはすはすはー!おなごの匂いじゃぞ!たまらんのう!」

「…………」

「……何じゃい、折角和やかな気持ちにしてやろうとしたのにのう」

「エイトリ殿……」

「嘆くな。そうワシは何度言ったかね?」


そこから聞こえるのは先ほどまでの声と違い、筆頭文官としての声だ。


「元々その可能性は極めて高かったのじゃからのう。ならば有効的に活用して迫る危難をやり過ごす以外に無いじゃろう?」

「ですが時期が時期です。確実に彼女自身が危険に巻き込まれる可能性が有ります。ならばその正体を隠匿したままでいた方が寧ろ安全かと」

「方便じゃな。そうしてカエデはどうなった?」

「ッ……!」


昔何かが在ったのか、ヴァインはエイトリの言葉に詰まり、やがて小窓から羊皮紙が出る。

見れば蝋が貼られており、そこには筆頭文官としての紋が在った。


「オエコラフも同様に応えるじゃろうのう。後は、御主じゃ」

「…………」


ヴァインは観念した様に書類を取り、自らの執務室に向かった。

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