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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第三章・トラジオンのカリギュラ
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赤枝の魔法使い

「いーぜ」

「もっとしっかり考えんか戯け」


エリルからの返答はさっぱりしていて、同時にゲンゾーはやれやれと頭を振るう。

しかしエリルは逆に首を傾げた。


「だってよ、俺にゃ学はねーし、お前に読み書き教えてもらって数年かかったぐらい頭も悪いしよ、今更どっかの商店なりに入れたって一生下っ端さ。だったらお前に着いてった方がまだ面白そうだぜ?」

「しかし危険も伴おうが。儂は命惜しくは無いかと聞いておるのだ」


精霊殿の食堂の中、双子が遊んでいる傍ら二人は話す。


「別に今更そんなこと……まぁ怖くねえっつったら嘘になるがよ」

「なれば、どうだ?断っておくが儂は其方を嫌ってはおらんし、寧ろ其方の気概は好いておる方だ。だからこそ危難は避けて欲しい」

「いや、俺だって戦いから離れたくねぇんだ」

「?」


余り言いそうで言わなさそうな言葉にゲンゾーは首を傾げる。


「だってよ、お前もそうなように俺だってガルガダスが故郷だったんだ。みんなの仇討ちぐらいしてぇ」

「………」


長い間その闇を見なかったからか、今になって思い出す。

彼もまたガルガダス事変によって家族と故郷を失った身なのだ。

だから、僅かでもその仇に関与出来る位置に居たい、そう思っていたのだ。


「仇討ちなど、無益などころか有害であるぞ」

「分かってる。殺された親父もお袋も喜ぶワケねーって」

「だが構わん、と?」

「おう、それにもうああいうひでぇ目に遭うのは俺たちだけで充分だろうしな」

「……そうか」


エリルがそう決めたのならばこれ以上は言わない。

後は自分が良き方向へと導いてやれば良い、そうゲンゾーは判断して立ち上がる。


「なれば儂からは言う事は無い。座長たる儂の為に馬車馬の如く幅広い人権無視を受け入れるのだぞ」

「ひでぇ!詐欺だ!」

「フハハハ、最早貴様の言質は取った。観念するのだな。先ずは修行のメニュー追加だ」

「うう……カッコつけなきゃ良かったぜ」


そんな会話をして次に向かうはチコの部屋だ。

軽く戸をノックし、返答の後に入る。


「兄様」

「………」


ベッドの上に腰掛け、膝の上に隕鉄を抱くチコがいた。

隕鉄はゲンゾーを見上げ、ゲンゾーはぎこちなく微笑んでやってからチコに向かう。


「チコや、少し大切な話が有るのだ。時間をもらって構わんかね?」

「大丈夫です」

「うむ」


と、側に置いてあった椅子に腰掛け、ゲンゾーは話す。


「この度我等赤枝はギルド傘下に加わると決めてな、要するに正真正銘の傭兵になると決定したのだ」

「つまり正式な兵団になると?」

「うむ、そこでだがな……」


と、ここで戸が誰かにノックされ、チコが促すとエーリカが現れた。


「おう、兄さんも居たのかい、ちょうど良いね」

「?」


ゲンゾーは席を立ってやり椅子に座らせるとエーリカは神妙な表情を作った。


「悪いね、エリルから話を聞いてちょっと飛んで来たんだ。重ねて悪いけど、少し立聞きさせて貰ったよ」

「ふむ、して話とは?保護者として儂も聞こう」


と、その言葉にエーリカは頷いて応え、チコを見た。


「結論から言うよ、嬢ちゃん、あんたは『魔法使い』適性が有る。おまけに通常の魔法使いからも桁外れに高くね」

「………?」


言われた言葉の大きさに一瞬呆然とし、しかしエーリカは続ける。


「良いかい?結界魔導をあっさり張れる魔法使いなんてね、成熟し切った魔法使いにもそんなに居ないんだ。魔力の制御や安定も難しいからね」


そしてチコの膝の上にいる隕鉄を見る。


「あと嬢ちゃん、あんたは隕鉄の声が聞こえてるだろう?」

「は、はい。若干ですが……」

「真か!?」


と、ゲンゾーは目を見開き、急な大声に驚いた二人に見返されてバツが悪そうに目を逸らす。


「い、いや済まぬ、続けてくれ」


少し不安げにそう応えたゲンゾーから目を放し、エーリカはチコに向き合う。


「良いかい?エーラは生命の王から加護を授かったから聖獣どころか竜とも話せる。エレンは大精霊様との儀式の為に大精霊様から授かった。けどね、何も地が無い嬢ちゃんにその力が備わるってなぁ異常なんだ」

「………母さまの」

「そう、魔法使いだったカエデ様の娘だったから、カエデ様の能力を継承した可能性が高いんだ」


つまり産まれた時から、タリオスの使徒達にさえ危険視された魔法使いの能力を備えていた可能性が有るのだ。

その意味するところを察してゲンゾーは内心歯を噛む。


(つまりチコもまたあの魔拳士の様な輩に狙われると言う事か……!)


実力を遥かに上げた今尚あの拳士には及ばないと分かる。

否、実力を上げれば上げる程にあの拳士の異常さのみしか分からない程だ。

闘えば殺され、守るべき物は失われるだろう。


「故においそれと闘いの場には出せん、と?」


ゲンゾーの言葉にエーリカは首肯で応え、チコははっとする。

即ち赤枝には入れないと言う事だからだ。


「わっ、私は嫌です!兄様のお力添えになれかしと学んだ技術なれば!兄様の御力になれないならば意味は有りません!魔法使いになどなりません!」

「チコや」


と、ゲンゾーは優しい声で頬に手をすっと当てる。


「我儘は言うてはならん。御主はまだ子供なのだ。どうか聞き分けておくれ」

「ですが……」

「何も離れ離れになる訳ではないし、何より赤枝は精霊殿の衛士、其方を守る役目も在ろうが」

「………」


そして膝を着いてチコの手を握ってやる。


「それにな、儂は家族をもう危険に晒しとうない。どうか儂の我儘を聞いてはくれんかの?」

「………私の我儘は飲み込んで兄様の我儘は聞けだなど、兄様はひどいです」

「それもそうだの」


苦笑しながら応えるゲンゾーと拗ねた様な表情のチコ。

やがてチコは観念した様にエーリカに向き合う。


「魔法使いとしての処遇は如何様な物ですか?」

「国の有事に備えて魔力の鍛錬、ま、今まで通りにやってくれたら構わないよ」

「承知しました。どうかよろしくお願いします」


正式な赤枝入りは叶わなかったが、チコは魔法使いとしての道を選んだのだった。



ステータス更新


NAME・チコ

レベル・1

クラス・魔法使い

筋力・H(EX〜H)

耐久・H

敏捷・H

魔力・C

対魔力・D

属性・光

保有スキル

属性魔導・D

結界魔導・D

異種対話・B

固有スキル

盲信・A

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