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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第三章・トラジオンのカリギュラ
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下調べ

トラジオンは係争地の前哨基地を兼ねた城塞都市であると共に、そこから幾方面への交通の要衝である為に冒険者達の街でもある。

更にガルガダス事変以降、本当の意味での危険性が増した為に単なる逃避で冒険者となった所謂半端者は激減。

今トラジオンにいる冒険者達は、本当の意味での冒険好きか、若しくは歴戦の強者しか居ないのだ。

そんな彼らが己の強さを実感でき、しかも金も手に入る仕事が在れば当然そこに市場が産まれる。


「その為の闘技場か」


トラジオン闘技場の規定がかかれた木簡を眺め、ゲンゾーはふうむと唸った。

場所は戻ってトラジオンの精霊殿の中庭。

ふうむと唸る足元には一本の木の棒が立って有り、その上で足指で挟む様にバランスを取りながらも顎に手を当てる。


(所謂ファイトマネーによって出場者は金を貰える。運営側は賭けを運営してその手数料に加え、単なる見物客の入場料で金儲けをしている、か)


こういった血生臭い催しだからこそ、金の流れで公正な取り分が貰えるかを考えねばならない。

さんざ苦労して得られる物は雀の涙では困るのだ。

大会の運営側の益、出場者側の益、更に街の益などを難しく考え、やがて、


「………ふむ、どちらにせよ、一度出ぬ限り分からぬな。鬼にせよ蛇にせよ、出たら逃げるとするかね」


木の棒から降り立ち、中庭に入って来たアリーヤを迎える。


「おう、どうだったかね?」

「ばっちりきっちりさ。また宜しくな」


パスガノの一件で助力して貰った報酬を受け取っていたのか、ずっしりとした革袋を手玉にして爽やかに笑う。

そしてアリーヤはゲンゾーの眺めていた木簡を見て口笛を吹いた。


「マジかよお前。トラジオンの闘技場っつったら死ぬか大金かで有名なんだぜ?」

「ほう、詳しく聞かせて貰おうかの」


大金と言うワードが出た以上無視出来ない。

聞かれたアリーヤは良いぜと応えた。


「トラジオン闘技場に詰める奴ぁ二種類居てな、闘技場で脚光浴びるのが好きな目立ちたがり屋と、小遣い稼ぎにふらりと来る奴だ。前者は闘技場での戦いに慣れてるから殊闘技場での戦いに関しちゃピカイチだな」

「して、後者は?」

「分かってんだろ?生粋の冒険者な上、闘技場を『小遣い稼ぎ』扱いする様な連中さ」

「前者より厄介な鬼と言う訳かね」


と、大体全容を把握する。

要するにトラジオンの闘技場はハイリスクハイリターンな虎の巣なのだ。

最前線の精鋭達が集い、だからこそ見応え有る戦いが繰り広げられ、そして収益が産まれる。

質の高い戦士達が集うからこそそう進化したのだろう。


「まぁ安心しろよ。一応ギルドも関わってるから無茶な相手に放り込まれたりゃあしねぇさ。ギルドマスターに感謝しとけよ」

「ふむん?ギルド?」

「は?」

「うむん?」


と、聞き慣れないワードに疑問符を浮かべるとアリーヤは更に疑問符を浮かべ、首を傾げた。


「なぁ、あんたらは一応傭兵なんだろ?」

「まぁ『赤枝』はそういう括りかの」

「傭兵ギルドに登録はしてんのか?」

「ふむ、しとらんの」

「モグリだったのかよてめーら……」


がっくり項垂れ、やれやれと頭を振る。


「一応登録しとけよ。幾ら精霊殿のお抱えっつったってギルドの情報は為になるからな」

「傭兵斡旋機関の様な物かね、然りよな。加えれば本来精霊殿からの直接的な依頼は許されないのではないかね?」

「ま、見える所でやられちゃ流石に咎められるな」

「当然と言えば当然よな、仲介料が入らぬだろうによ」


すっきり納得し、同時に悩む。


(確かに冒険者達の情報は有難い。責任者として砂を噛む役は儂も構わん。しかしチコとエリルは……)


一応チコは精霊殿の人間ではなく赤枝の一員だ。

しかしチコの将来を考えればなるたけ戦いから遠ざけて真っ当な人生を送らせたい。

エリルも出来ればそう有るべきだとも考えている。

自分一人で軽々に出して良い結論は出ない。


「矢張り話しておくべきだの」


精霊殿に残るか、若しくはここでの給金とゲンゾーの賄いでここを出て安穏と暮らすか、兎に角選択肢は用意すべきだろう。

木の棒を拾い上げ、ゲンゾーはアリーヤに向かう。


「いや為になる話に助かった。また機会あらば会おう」

「どうせ狭い世界さ。否応無しにツラ突き合わすだろうぜ、またな」


アリーヤはにかっと笑い、去っていった。

先に言うならば、彼女とはまた早い内に再開するのだが。

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