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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第三章・トラジオンのカリギュラ
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牢獄スタート

「…………」


ぽつりと鼻先に落ちて来た水滴。

見上げる天井は無骨な岩で敷き詰められた、紛う事なき地下牢の物。


「そして手には荒縄、か」


手首にぎっちりと締められた荒縄。

体が動かせないまま、ゲンゾーはふぅと溜息を吐く。


「諦めモード入ってんじゃねーよ!」


鉄格子を挟んだ右隣りからはエリルの声。

ひーと泣くエリルを他所にゲンゾーはぼけっとした表情で応える。


「やかましいぞエリル。鳴けば撃たれようが、雉はそれでなくとも目立つにの」

「ワケ分かんねーって!ぐぎぎ……!」


その首には水晶が嵌った首輪が有った。

そう、従属の枷だ。


「騒ぐんじゃねーよエリル。体力を無くすだけだぜ」


そして左隣りからはアリーヤの諦めの声。

同じく従属の枷を嵌められた彼女は深い溜息と共に続ける。


「あたしもてめぇも、あのウスラとおんなじで死ぬまで働かされるんだろうよ。長生きしたきゃ大人しくしてな」


そしてゲンゾーの向かい、暗闇の広がる牢から野太い声がする。


「ゴ……」


牢の鉄格子を握るその手は幼な子の頭を遥かに越して巨大であり、何より無骨だった。

更に握り拳だけではない、その身体も無骨な物だった。

悠に2メートルは越す巨体に筋骨隆々な凹凸。

僅かに見える口元からは、イルカのそれのように尖った歯。

肌は深い緑に有り、正に鬼と呼ぶに相応しい背格好の存在だ。

その禿頭の下に有る真っ赤な目はゲンゾーを捉え、そして、


「ゴメンなさい、僕なんかのせいで……」


気弱な言葉が漏れた。


「そう気にするでないと言うたであろう。儂は其方をただ助けたかっただけよ。むしろ余計な節介で迷惑をかけて済まぬな」

「そ、そんな事……!僕、嬉しかったです……」


ゲンゾーの言葉に声の主はその巨体に似合わず小さくなってしょんぼりと項垂れた。

しかしゲンゾーの両隣りは止まらない。


「あー嫌だぁー!お天道様がもっぺん見てぇよぉ!ゲンゾー!お前は従属の枷効かなかったんだろぉ!?そんなヘボ縄千切って早く助けてくれぇ!」

「うるせぇっつってんだろタコ!寝て体力を温存しとけ!大体てめぇが言い出した事でこうなったんだろ!」

「んだとこの男女!」

「やるかオラァッ!?」


地下牢に響くやかましい声。

両手がフリーなら耳を塞ぎたいと思うゲンゾーだった。


(はて、元はと言えば誰のせいであろうな……)


取り敢えずゲンゾーは時間を潰す為に数週間前を思い出すのだった。

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