確かな思い
(…………)
記憶の根幹、意識の底。
そこに彼女はいた。
ケウデスと同じ瞳の儚げな女性。
彼女は穏やかにセレを見つめ返し、静かに言う。
「私を祓いますか?」
(……はい)
やや息を飲んでから応える。
彼女の悔いを知っても、それでもセレはそう応えた。
「そう……貴方も、なのね」
(?)
「ケリィに不幸を呼ぶ……私と同じ……ケリィのためには存在自体してはならないモノ」
(!)
ごうと、怨嗟の念が彼女の身を纏う。
涼やかな表情で、冷徹にセレを睨む存在。
「私と一緒ニ消えテちョウだイ」
ぞわりと触れるその怨念は最期の時を濃縮した感情か、言葉にならない不快感を覚えた。
(怖い!)
「私モ怖かッタ」
(苦しい!)
「私の方ガ苦シカッた」
(助けて!)
「ワタシハナンドモソウネガッタ」
凄まじい怨念と、それを消す事への躊躇いによって生まれた隙を、まるで汚泥が流れ込んで行く感覚が身を縛る。
もう何も感じない様に心を閉ざそうとした時、
(!)
掌が、僅かに輝いた。
何かと手を開けばそれは、
(ゲンゾー様の作ったキッシュ?)
それは彼が来てから毎日口にした彼の料理だ。
触れた物に自分の魔力を少し重ねるその特性か、微細ながらも確かに悪意を跳ね除けている。
「『今この場』は、儂が生きる時間であるし、其方が生きる時間だ」
(!)
鮮烈に思い出す。
彼の言った言葉が福音の様に闇を照らす。
自分の生きる時間だからこそ、自分の幸福を願って生きる、彼はそう言った。
皆を守るのも、自分の幸せのためであると。
(人の幸せを、自分の幸せに重ねられるって……)
だから人以上の活躍はしないし、だからこそ人らしく人を守る、彼はそう言った。
(私にしか出来ない事……)
身体を蝕む怨念の泥を受けながら、意を決した表情で女性と向き合う。
(貴方を祓いはしません。でも貴方の悔いを祓います)
「?????」
(貴方は……誰よりも自分が憎いのですね?)
「……………そうね」
泥の勢いが弱まる。
(弟さんが……貴方を憎んでいるとも)
「……私がケリィの未来を、全て壊してしまったもの」
無表情だった瞳に悔いの色が見える。
(…………もし、直接お話し出来るなら、したいですか?)
「………」
そんなセレの言葉に動じず、やがてーーーー




