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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第二章・ジプシーの意味は放浪者
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聖獣たち

話は少し前に遡る。

パスガノ外壁、衛兵詰め所に入った急報がそこにセトナを呼んだ。


「猛る聖獣?」

「はい。南西の見張り場からです。霊鏡からの報せで」


衛兵の言葉に詰め所内にある鏡に向かい、僅かに指で弾く。

瞬間、鏡が僅かに揺らぎ、どこかの詰め所と衛兵が映った。


「こちらパスガノ守備隊、どうした?」

『セトナ守備隊長!リヴァイアサン級のスフィンクスを確認!そちらに向かって北上して行きました!』

「何?」


スフィンクスと聞き、僅かに眉根を寄せる。


「そのスフィンクス、ヒエラコスフィンクスだったか?」

『そこまでは確認出来ませんでした!ただこちらの放った干渉魔導も一切通用しなかったもので!』

(干渉魔導が通用しない……魔力障壁か。リヴァイアサン級はそうそう居まい。だとすれば例のヒエラコスフィンクスか)


ふむと唸り、続ける。


「分かった。そちらはそのまま武装して待機。引き返して来た場合遅滞防御に専念せよ。仕留める必要は無い」

『はっ!』

「ジェドカラー、まず例のヒエラコスフィンクスと見て間違い無い。近隣の住民を避難させ、石化に耐性の有る魔導師と弓兵を招集。メジャイ部隊も可能な限り動員せよ」

「はっ!」


鏡の中の景色が消え、ジェドカラーと呼ばれたメジャイは影に消える。

そしてセトナは外壁に出て物見の獣人族に寄る。


「確認出来そうか?」

「はい。視界は良好な状態です。ただ目視出来た所で直ぐに来そうですが……」

「構わん。来たと分かれば私が一時的にも動きを止めれる」


慌しく住民が避難する中、セトナは思案する。


(しかし余りに出来たタイミングだ。これも黒檀殿の策略の内か、或いは……)


それはケウデスの戦力分散の策略だがそれとは知らないセトナにとって、この混乱が何故起きたかは宮廷内の不穏分子かとも考えさせた。

この混乱に乗じてパスガノ内の守備隊を割き、その隙に工作を行うのではないかと。


(本隊は動かせまい。ましてやネフティス様の護衛連隊もな。困った事だ、かなり無茶をせねばならん)


メジャイ内随一の手練れでもあるジットー、そして同じ聖獣のソペクネフェルを欠く中で何とか対処せねばならない。

その事実に何がしかの被害を覚悟した瞬間、獣人族が目を見開いた。


「来ました!南西方向!」


そこにはソニックブームを起こし、傷だらけの体躯と憤怒の瞳を宿したヒエラコスフィンクスがいた。


「来たか!」


獣人族が視認した瞬間にはもう迫っており、パスガノの穀倉地帯を衝撃波で割きながら駆けていた。

そして外壁そばに来た瞬間、


「行かせん!」


セトナは自らの影に両手を着け、そこに交わっていた外壁の影を網の様な形で放り出し、ヒエラコスフィンクスを捕らえた。

高速で迫っていた為かヒエラコスフィンクスはそのまま外壁内の住居に突っ込み、もうもうと砂煙が舞い上がる。

しかしセトナを始めとするメジャイにはそんな視界不良は問題にはならない。


「ジェドカラー!」

「はっ!」


すぐさまメジャイ部隊がとびかかり、魔力障壁を展開する前に干渉魔導を放たんと迫る。

しかし、


「っ!?」


網状の影の間隙から光が走った。

メジャイの幾人かは傷を負いながらもそれをかわし、セトナは歯を噛む。


「矢張り通常の魔導をも使うか!」


そこには光魔導で網状の影を払うヒエラコスフィンクスが居た。

片目が潰れたその姿は傷だらけで、正に手負いの獣そのものであった。

にも関わらず、その威圧感はメジャイ部隊を圧倒するものとして充分だった。


(しかし属性魔導が光ならば、矢を防ぐ風は起こせまい!)


セトナはすぐさま配した弓兵に合図を送り、弓矢がヒエラコスフィンクス目掛けて降り注ぐ。

しかし深い羽毛の為か、ヒエラコスフィンクスは見向きもせずに身体を回し、全て弾いて石化の霧を吐き出した。


「いかん!散れ!」


メジャイはすぐさま影に隠れてやり過ごしたが、弓兵はそうはいかない。

迫る石化の霧は、


『させませんぞ!』

「!」


弓兵に届く前に影から現れた巨大な物体に防がれ、弾かれた。

その巨大な物体は地響きを鳴らして降り立ち、ヒエラコスフィンクスに対峙する。


「ソペクネフェル殿!」

『いやぁ間に合いましたな!』


宝石で出来たその鱗は魔力障壁の役割を果たすのか、その身に傷一つ無い。

しかしここにソペクネフェルが来る訳にはいかない理由を知る身のセトナは同時に冷や汗を垂らす。


「ソペクネフェル殿!黒檀殿とセレ様は……!」

「そこはあたしから」

「!?」


ヒヒヒという笑い声と共に影から声が響き、ジットーが現れる。

そしてセトナに状況を説明する中、ソペクネフェルは僅かに表情を締めた。


(この聖獣……明らかに戦士の聖獣か。私には少々荷が重いが……そんな泣き言を言っている場合でも無いか)


あくまで戦闘には向かないソペクネフェルには明らかに歴戦を誇るこの聖獣は不利だ。

援護に期待しようにもあの石化の霧を防ぐ手立てが自分にしか無い以上、自分が前に出なければ被害が拡大してしまう。

そう考えたソペクネフェルは頭から二対の宝剣を生やし、その間に光球を宿して猛るヒエラコスフィンクスを睨む。


『さぞ高名な聖獣殿とお見受けした!なればこそ!御前の為にもこの様な殺生をさせる訳にはいかぬ!』


二人の聖獣は猛然ともつれ合った。

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