急転の空
地に伏すガロンを見遣り、アリーヤは息を吐いて尻餅をつく。
「……なんとか誤魔化せたなぁ。参った参った」
「やっぱお前も限界だったか」
エリルは言うに及ばず、裏路地の壁を背にぐったりと座り込んでいた。
アリーヤも魔導に力を使いきり、逸らした電撃の余波のダメージが体力を確実に削っていた。
しかしとエリルは何より分からない疑問を吐く。
「しかし二倍近くレベル差が有るのによく俺ら勝てたな」
ぽつりと吐いた疑問を聞き、アリーヤがやれやれとため息混じりに応える。
「お前らマジに知らなかったのかよ」
「何がだ?」
「あの治癒士のお嬢ちゃんの恩恵さ」
(治癒士?あー、エレンの事か)
二人を治癒した人間と言えばエレンだ。
わざわざ訂正せずアリーヤの答を聞くエリル。
「あのお嬢ちゃんの治癒はブーストヒール。治癒魔導の中じゃ上位も上位の魔導さ。効果が残る限り全てのステータスがブーストされるっつー洒落にならねースキルだよ」
「だから俺たち勝てたってか」
「むしろ無かったらあたしらはすん刻みだったろうよ」
付け加えるならばゲンゾーがグリンブルステインと初戦のケウデスとの連戦に勝てたのもその効果のおかげだ。
しかし今はその効果が無い。
そんな事は露知らない二人はどっこらと身を起こし、白目を剥いて突っ伏すガロンを見遣る。
「で、これからどうするよ?」
「そうだな、副長…いや、そこの間抜けはどうやら連中の情報知ってるみたいだし、逆に人質として利用出来るみてーだからよ、取り敢えず連れて帰ろうや」
「だなぁ。これ以上の追跡は俺たちも無理だし、それにグレタの姉さんならそいつを軽くあしらえるだろ」
と、帰還の途に着こうとした瞬間、
「!?」
上空を巨大な物体が駆け抜けた。
何かと見上げれば、
「なんっ……だありゃ!?」
猛り狂うヒエラコスフィンクスとペトスコスがお互いを抑えるように取っ組み合い、そして何かを目指して高速で飛んでいた。
余りに異常な光景に目を見張るエリルと、冷や汗を垂らすアリーヤ。
「見間違いだと良いがよ…」
「?」
「あの妖精族の嬢ちゃんも見えたぜ…」




