傭兵のけじめ
裏路地の中、地面の味を噛み締めるエリルがいた。
体中刀傷を負い、自棄糞の様に笑う。
(そりゃ当然負けるよな。ゲンゾーに鍛えられたからって調子こいてたけどよ)
その視線の先、憤怒の表情のガロンがいた。
「ナメやがって……お前みたいな木っ端にやられると思ってんのか!?」
実力の差は歴然だった。
獣人の身体能力を発揮しようと、曲がりなりにも剣技を身に付け、リーチも長刀によって圧倒的に勝るガロンとでは話にもならなかった。
巻き起される剣風に防戦がやっとの事で激昂する相手であってもこのざまである。
「あーあ……確かにあんたの事……ナメ過ぎてたよ……」
自虐気味に吐き捨て、とどめとばかりに、しかし決してエリルのリーチ圏内に入らぬよう迫るガロンを前に拳を握る。
(畜生……何やってんだよ俺、ダッセェ……あいつと対等に話せるからって錯覚しちまったのか……?)
ゲンゾーの居る場所にまだまだ至っていないと頭では分かっていた。
だがここに至って漸く本当の意味で理解する、彼が自身さえ守っていた事、そしてそれに自分が甘えていた事に。
悔しさと情け無さに歯を噛み、長刀を振り上げるガロンの前、
「!」
槍が現れてガロンを強制的に引き剥がしていた。
ガロンは目を見開き、エリルも身を返して槍の持主を見上げる。
「アリーヤ……!」
ドラコニーの女戦士がそこにおり、ガロンを睨みつけている。
しかしどうしてかエーラがいない。
「だらしねぇなエリル、真打ちが来てやったからもう寝てろ」
「……エーラはどうしたよ」
「野暮用だ」
短く言い放ち、ガロンの前に立つ。
「副長、何故かとか、そういうまだるっこしいこたぁ聞かねぇ。だからこれだけ教えろ、嫌々団のみんなを差し出したのか?」
「ハッ、そうだって言ったら恨み言無く死んでくれるのかよ?」
「……そうかい」
そして槍を低く構えた。
「何だよアリーヤ、お前団の誰かとデキてたのか?だから怒ってんのか?あんなカス連中に義理立てしやがってよ」
「いや、連中は確かに傭兵らしくクソばっかりだったね。いつか惨たらしく死ぬだろうって思う奴も居たさ」
だが、と。
「あたしの仲間は仲間だったんだ。ケジメだけはきっちりつける!」
「やってみろよ売女ぁ!」
猛然と槍と長刀が交わるのだった。




