牙の加護
空を鈍く切る音が響く。
余りに巨大かつ素早い氷の腕は凄まじい気当たりを放ち、リーチも格段に伸びた。
(加えてこの硬さ…!)
捌く様に弾こうにもその質量故に力負けしてしまう。
トラックの衝突を素手でかわす様な物だ。
(それを苦し紛れにも捌けるとはな。儂この世界に来てから若干以上何らかの力が働いてないかね)
両手突きの要領で繰り出された二対の腕を捌き、距離を取ってケウデスは舌を巻く。
(やれやれ。無属性の作用とは厄介な、触れる度にこちらが相手に冷気を与えるどころか、逆に氷が消えて行くとはな)
無属性の特性故の利点だ。
魔力的干渉を完全にシャットアウトする以上、ゲンゾーがその氷の腕を触る限りどんどんその氷は消失してしまう。
更に言えば触れた際に冷気干渉を起こして相手の動きを鈍くする作用も有るのだが、全く機能していない。
つまり単純な質量での衝突以外効果が無く、魔力の消費も多い。
(要するに技量の差が力任せの技によって埋まった、か………成る程、手早く攻めねば私が負けるか!)
鈍く空を切り、再び拳を奮うケウデス。
余りの攻撃範囲とその異常な質量が先の先、そして先の後を同時に行っており、後の先を取ろうにもリーチが足りない。
「むっ……くっ……!」
まるで壁のように立ち塞がるその技撃の軌道は見切りが達者であればある程先読み故に攻撃出来ない。
(いかんな……『あの一打』さえ放てば勝つが、リーチが足りぬ!)
こういった達者を相手取る秘策はあるが、今はそれが叶わない。
一先ずは隙を作る、そう考えて虚の気当たりを下から放つ。
「!」
反射的にケウデスは腕をやや落とし、掌を下腹部で重ねる。
(かかった!)
瞬間、地にヒビが入る程の踏み込みを入れ、最速の瞬歩を放ち、腕を飛び越す様に横蹴りを顔目掛けて放つ。
「!」
しかしそこに見えたのは、
(見切ったぞ、黒檀の拳士!)
獣の様な縦引きの瞳を宿したケウデスと、そのほくそ笑みだった。
「っ……!」
首筋を走る怖気に身体を引くも遅い、
「ぐっ……おぁ……!?」
開いた身体に二対の腕による両手突きが突き刺さり、体の中から鈍い音が響いて意識が暗転した。
ステータス更新
NAME・ケウデス
レベル・58
クラス・拳士
筋力・B(EX〜H)
耐久・E
敏捷・B
魔力・E
対魔力・F
属性・氷
保有スキル
ビューロー流拳闘技・A
見切り・A
固有スキル
牙の加護→見切り、筋力、敏捷ブースト




