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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第二章・ジプシーの意味は放浪者
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望む物、臨む者

ゲンゾーの足元の影に潜むは三人、ジットー、ソペクネフェル、そしてセレだ。

上の会話を聞きながらソペクネフェルはふむと唸る。


『どうやらあの拳士はやる気のようですな』

『違いありやせん。気配も面の木っ端どもたぁ段違いでさ』


ケウデスの剣呑な雰囲気を悟っているのかそう話し、一方でセレは倉庫内の暗闇に気を遣る。


(沢山いる……痛い、帰してって叫んでる……)


そう、彼女には死者の声が聞こえる。

その大半のさけび声は幻獣達の怨嗟であり、しかし同時に慣れていると言わんばかりにセレはひたすら声を探った。

ネフティスの言によればこの中にこそ運命を変える声が有るはずなのだ。


(さて、何を企んでいるのかね?)


上のゲンゾーはと言うとケウデスを睨んだまま動じない。

間合いは五歩ほど。

瞬歩を使ってもやや足りないその距離で、ケウデスは腰に提げた何かを取り出した。

それは掌程も有る卵だった。


「…………確かに我々の計画は頓挫した。しかし勝ちたい勝負だけは拾わせてもらうぞ」

「ほう?如何にしてかね?」


応える事無く、ケウデスの手甲に有る宝珠が輝き、卵が氷に覆われる。


「まずは要らぬ観客から遠慮してもらおうか」

「?」


訝しむゲンゾー。

そして影の中のセレが、


『!』


強まった怨嗟の声に気付き、ジットーらに叫ぶ。


『駄目です!あの卵、聖獣様の最後の子です!』

『何と!?』


ソペクネフェルが驚愕に叫ぶと同時、ジットーは影を滑らせてケウデスの影に混じり、影から腕を出して暗器を躍らせた。

しかしケウデスは予期していたかと言わんばかりに足甲で捌き、ジットーの腕を蹴り上げて影から引きずり出す。


『チィッ!」


影から引きずり出され、ソペクネフェルとセレも強引に引き出された。

と同時にゲンゾーはソペクネフェルの巨体を影に飛び上がり、上方より浴びせ蹴りを放ち、ケウデスは受け止めてお互いに距離を取る。


「どうしたね?遠慮してもらうのでは無かったか?」

「いや、もう動かねば間に合わぬだろうよ」


訝しむゲンゾーを他所にセレが再び白昼夢を見て叫ぶ。


「その子……親を呼んでる……!」


その子とは、その卵だった。

僅かに冷気の魔技をくらったその卵は危険を感じて意志で叫び、その親を呼んだのだ。

聖獣の親と分かるや否や、同じ聖獣のソペクネフェルが耳を澄ませ、渋い表情を作る。


「その卵、ヒエラコスフィンクスの卵か!」

「ほう、よく分かる。さては貴様も幻獣種か」


ヒエラコスフィンクスの卵。

そして返せと叫んでいたあの街道のヒエラコスフィンクス。


「貴方があの聖獣様達を……!」


セレはケウデスを睨み、ケウデスは不敵に笑った。


「さぁどうする?ヒエラコスフィンクスを止めれる存在がそうそう在るか?察するにあの幻獣には会っていよう、そして分かっているはずだ。あれは間違い無くリヴァイアサン級とな」

「リヴァイアサン級?」


ゲンゾーが疑問を吐くとジットーが応える。


「幻獣種の脅威度でさ。魔力防壁の有無でリヴァイアサン級、更に属性を極めて並みの聖霊に並ぶ存在はキングリヴァイアサン級ってねぇ」


確かにあのヒエラコスフィンクスは魔力防壁を展開していた。

一切の攻撃を防ぐあの防壁は並大抵の力では突破出来ない。

そう、強い聖獣の前に数は無力なのだ。


「マズイな……!黒檀殿!」

「心得ております」


ゲンゾーはすっと構え、ソペクネフェルはジットーの影渡りに潜み、ジットーは出口に向かう。

そして、


「セレ様!」


セレは動じない。

ただ黙って死者の声に耳を傾け、ソペクネフェルに向かってかぶりを振る。


「私は残ります。今ここで声の中にこの拳士の弱点を叫んでいるかも知れません」

「……長の御意志ですかい?」


ジットーの言葉に頷く。

ここでゲンゾーの補佐をする。

それが運命を変えるかも知れない。

ネフティスの見た未来を信じ、そして護りの拳士の背中を信じる。


「お祖母様はゲンゾー様を信じました。どうか……」

「…………」


ジットーは何も語らず影に消え、ケウデスも構える。

その宝珠の煌めく甲を構え、僅かに笑った。


「……何故かな、任務失敗に嘆く所だが、愉快で仕方ない」

「自棄っぱち、という言葉を知っているかね?」

「成る程、確かに一理ある」


お互いに自嘲気味に笑い、


「……!」


声も出さずぶつかり合った。

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