未来への決断
それは少し前に時間は戻る。
ゲンゾーとセレが隠れる部屋に暫くしてから戸が開き、
「うぬん!?」
宝石で出来た鰐が現れた。
余りに現実離れした光景に一瞬ゲンゾーは構え、しかしセレは動じない。
「ソペクネフェル様」
『いや、遅くなって申し訳ない。例の件が判明しましたぞ、黒檀の拳士殿」
言いながら鰐は光と共に形を変え、やがてソペクネフェルが現れる。
当のゲンゾーはその鰐こそがソペクネフェルと理解し拳を下げた。
「ソペクネフェル殿であったか。失礼した」
「構いませんよ。それよりも貴方方と共に来た隊商の件です」
「如何に?」
と、そこでソペクネフェルの足元の影から昨晩の目に傷の有る影渡りの戦士が顔を覗かせて卑屈に笑った。
「倉庫街端の倉庫に入ってまさ。あたしらの方でも確認出来やしたぜ」
「そうか。矢張りそうなるとあの襲撃から既に仕組まれておったのですか」
ふむとゲンゾーは唸り、やがて頷く。
「案内を頼みます。貴方方を信用云々でなく、儂の妹が心配ですので」
「安心しなせ。あたしらも親方様よりそう言い付けられてまさ」
ヒヒヒと笑う影渡りの戦士。
そしてそんなソペクネフェルの後ろから杖を付いたネフティスが現れる。
「ではジットー、お主は黒檀の拳士殿の助力に向かうんじゃ。何、心配召されるな。このジットーはジプシーの戦士中最も頼りになる影じゃぞ」
ソペクネフェルの影から這い出るジットーと呼ばれた戦士。
影から全身が出て初めて気付く。
身体中の傷はその潜った修羅場を物語り、異様に長細いその手足は正に影から敵を襲うのにうってつけな物だ。
拷問か何かで付けられたであろうその目の傷跡をなぞり、キヒヒと笑うジットー。
「長に太鼓判を押してもらえるたぁ、あたしもなかなか捨てたもんじゃねぇでさ、ケヒヒ。宜しくお願ぇしまさ、黒檀の旦那」
「何とも傾いた喋り口ですの」
やや倦怠感を残すその身体を起こしてゲンゾーはぐっと拳を握る。
「!」
瞬間、セレの頭に鮮烈な白昼夢が襲った。
その光景は一瞬にして明確な運命を照らす。
倒れ伏して自らの血溜まりに沈むゲンゾーと、その血で手を濡らす片方の角が欠けた恐ろしい双角の拳士。
その向こうには精霊殿の皆の骸が横たわっている。
「っ!」
こういった白昼夢は決まってその時目の前に居る人間の決断によって確定した未来を示している。
つまりここでゲンゾーを行かせればその未来が確定するのだ。
「待って下さい!」
反射的にセレは叫び、仕度をしていたゲンゾーはやや訝しげにセレを見返す。
「どうかしたかね、セレ嬢」
「っ……」
どう言うべきか迷う。
そも何をすればこの未来を覆せるか分からない。
そう逡巡した時、ネフティスがふむと唸った。
「どうやら死の未来を見たようじゃな、セレ」
「……はい、お祖母様」
「死の未来?」
「其方と精霊殿の面々のじゃろう」
「!」
言われたゲンゾーはやや表情を固め、ネフティスはしかし不敵に笑った。
「なれば異なる運命を重ねて多少逸らすしかあるまいの。セレ、ソペクネフェル、其方らも同道するんじゃ」
その言葉にソペクネフェルは恭しく傅き、しかしゲンゾーは表情をしかめる。
「ネフティス殿、それはなりません。ソペクネフェル殿はこの都市に必要な人材でしょうし、セレ嬢は儂の護衛対象です。みすみす危険に晒すは愚策でしょうや」
「おう?ソペクネフェルは聖獣じゃし全く危険ではないぞよ?」
「では御自分の孫娘は?」
「そう不安がるでないわ」
と、ネフティスは笑う。
「これは一つの試練じゃよ。其方が託宣の拳士とワシは信じて疑わぬが、それでもまだ判断は下せぬ。試す真似になるが、この試練を以ってこのパスガノに招いた危難と妹御を助ける対価を払ったとしよう」
「……それを突かれれば言葉も有りませんな。承知しました」
不承不承ではあるがゲンゾーは承諾し、ネフティスはセレに耳打ちをする。
「良いかね我が孫娘や、恐ろしいじゃろうし、一歩踏み出せぬやも知れぬがな、元は皆命じゃ。決して見誤るでないぞ」
「……?」
その言葉が何を意味するか分からない。
唯一分かる事は、ネフティスはセレとは違う未来を見たと言う事だ。
ステータス更新
NAME・ジットー
レベル・71
クラス・メジャイ
筋力・C(EX〜H)
耐久・B
敏捷・A
魔力・C
対魔力・B
属性・闇
保有スキル
特性魔導・A
干渉魔導・A
隠行・A
歩法・A
固有スキル
ジプシー族・A




