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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第二章・ジプシーの意味は放浪者
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邂逅と追跡

パスガノに朝が訪れ、昼に差し掛かる頃、街中を歩く三人がいた。

エリル、アリーヤ、エーラの三人の内一人は楽しげな表情で、しかして青筋を立て、一人はげんなりしながら歩き、最後の一人は困った表情を作っている。


『んぅー、次の角を……左?ですよぅ』

「ほぉ、四回連続左か。元の場所に戻っちまったな」

『あ!すごい!エリルさん迷路得意なんですね!』

「……なぁ、こんなのに千里眼授けた神様って何考えてんだろな」


あれからかれこれ四時間近く町はずれから彷徨っているが一向に目的地に着かない。

と言うのもナビゲーターである千里眼持ちのリリアは所謂そういう人間だからである。

似た様な道を行ったり来たりの繰り返しをする三人の内アリーヤは取り敢えず羽を広げた。


「空から見た方が早いか?」

「目印になる建物が分かりゃそうしてくれ」

「……疲れるだけって事か」

「……やっぱお前この街初めてか」


溜め息を吐くエリルとアリーヤ。

そしてエーラは申し訳無さそうに口を開く。


「ご、ごめんなさい。アノーラの俯瞰の目を使えばすぐ分かるんですけど……」

「構わねぇよ。エーリカ姐さんの言から察するにそうポコポコやって良い事じゃねぇんだろ?」


取り敢えずエリルはそうフォローを入れ、困ったように頭をがしがしかいた。


「よし、埒が開かねぇ。取り敢えずそこらで飯食おう」

「へっ!?で、でもこの首輪を早くエーリカさんに……」

「賛成だ。あたしも腹減った」


と、護衛二人はエーラを担いで近場の市場に入る。

屋台街の様なそこを巡り適当に腹を満たすつもりか、エリルは皮袋を開いて小さな貨幣を摘み、はたと止まってアリーヤ等に振り向く。

当然二人はエリルを見つめるのみだ。


「……もしかして俺が奢るのか?」

「もしかしなくても奢れや。あたしの金は宿屋だし」

「わ、私は結構です、エリルさん!」

「……まぁ元々一人で食う気はねぇから構わねーよ。そう気にすんな」

「おっ、太っ腹」

「てめーは気にしろ」


と、手近な屋台にて手頃な食べ物を頼み、エリルが値切りする中アリーヤはエーラを担いだまま表情をしかめる。


「どうしました?」

「……知ってる歩き方だな」

「?」

「足音だよ」


腰に提げた短くした槍をなぞり、アリーヤは応える。

知った人間がすぐそばにいると。

しかしその表情は既知の人間に会えた歓喜は無く、寧ろ怒りの表情だった。


「へぇ、技は半人前のクセにそういうのは読めるんだ」

「!」


エーラがその突如した声に驚き、アリーヤは人波の中から出て来た人間を見遣って僅かに眉を動かす。


「ガロン副長、生きてたんだな」

「……何だよ、少しぐらい喜べよ。傷付くなぁ」


ミシェット・ガロン所属だった二人は睨み合い、アリーヤから先に口を開いた。


「……あのあんたの腕輪嵌めた腕は何だったんだ?」

「ゼトスの腕さ。野郎引退してから知り合いん所でヘマしたらしくてな」

「仲間殺しの上に騙眩かしかよ。もしかしてあの襲撃もか?」

「ミシェットの野郎邪魔だったしな。俺がヴィラレスク委員会に気に入られる為の捨て石さ」


吐き捨てる様に笑うガロンと静かに睨むアリーヤ。

そして担がれたエーラは冷や汗を垂らしながらガロンを睨んだ。


「矢張り貴方は邪神信仰の……!」

「ハッ、俺は無神論者さ。あくまで俺を買う組織が有ったもんでね」

「それがヴィラレスク委員会なる組織ですか」

「当たり」


ガロンはくつくつ笑い、布切れを取り出して見せ付けた。

その布切れを見てエーラが凍り付く。


「チコさんの服の袖……!」


それが何を意味するかすぐアリーヤは悟り、動揺するエーラを抑えてガロンを睨み返した。


「人質取って何を欲しがるんだよ。無い袖は振れねぇぜ?」

「金じゃねぇ。お前ん所の拳士サマが連れてる予言者と交換さ」


その言葉に眉根を寄せ、何かを言おうとしたエーラをまた抑えてアリーヤは僅かに思案する。


(あの兄さんは護衛対象は助けてるって事か。しかしどうする?)


迂闊な事は言えない。

そもそもゲンゾーとセレの居場所が分からないこちら側としては交渉すら叶わない。

もし間違えればチコの人質としての有用性が無いと判断され、最悪殺されるかも知れない。

判断を仰ぐ相手も情報も足りない中、必死に思案するアリーヤ。


「良いぜ」

「!」


その沈黙を破ったのは戻って来たエリルだ。

串をくわえたままあっけらかんと応え、ガロンは口の端を釣り上げる。


「嫌にあっさり応じたね」

「応じなきゃチコを殺すんだろ?だったら応じるね」

「……へっ」


その冷静な態度が気に食わなかったか、ガロンはやや凄みを効かせた笑みを浮かべる。


「期限は日没までにだ。場所はまた宿屋に行ってやるから宿屋の外に一人でぼっ立ちさせとけよ」


そう言い残してガロンは人混みの中に消え、エリルは新たな串を食べながら二人に寄る。


「さて、日没まで猶予が出来た上にマヌケがノコノコ自ら来てくれたな」

「?」

「ほれ、アノーラの魔力交信さ」

「!」


そこで二人は気付き、次いでエレンの声が響いた。


『ありがとう、エリル。これであいつの魔力を辿って拠点を突き止められるわ』

「まさか敵さんもスキル多用からの追跡なんざ思い付かねぇだろうしな」


と、エリルは買って来た食べ物を二人に渡して自らはガロンの去った方角に向かう。


「俺は直接あいつを追跡する。アリーヤ、あんたはエーラを送り届けた後エレン達の報告に従って居場所に来てくれや」

「ちょっ……待てって!」

「心配すんな!スラムじゃよくやってた追跡術さ!」


気付けばエリルは駆け出し、アリーヤも暫くしてからエーラを担いで駆け出した。

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