予言者
ゲンゾーが覚醒すると見知らぬ天井が見えた。
否、天蓋だ。
柔らかな感触は明らかに宿屋の寝具とは違う。
「っ!」
慌てて身を起こすと腹部に鈍痛が走り、耐え難い倦怠感も襲う。
覚醒するなり意識と記憶を整理し、腹の調子を探る。
(まだ左程時間は経っておらん……精々二時間かそこらか)
状況を把握すると豪勢な寝室の角に居る何者かが立ち上がった。
「おお、お目覚めですかな?」
褐色の肌に禿頭の偉丈夫。
しかしてその瞳は爬虫類のそれの様な縦引きの瞳だ。
何者かと訝しむ中、偉丈夫は恭しく礼をする。
「セレお嬢様をお救い頂き誠に有難うございます。私はこの館の主人に使える筆頭官ソペクネフェルと申します」
ソペクネフェルと名乗った偉丈夫はやがて小さく鈴を鳴らす。
「ネフティス様にお目覚めとお伝えせよ」
「はっ」
見えない足元から僅かに声がし、やがて気配が消える。
未だ警戒するゲンゾーはその気配を出さず口を開いた。
「どうやら貴方方に救われた様だ。して、セレ嬢は何処に?」
「お隣に」
「むん?」
ちらりと寝具の脇を見ると、セレが椅子に腰掛けたまま眠っていた。
(ふむ。通常この手の者で歓迎されぬ場合こういった知己の者との接触は無かろうか)
やや警戒の念を落とすと同時、扉が開いて占師の様な黒衣を頭から被る老婆とその手を支える壮年の男の二人が見えた。
老婆は閉じた瞳のままゲンゾーの方に向き、ほっほと嗄れた声で笑う。
「目覚めたようじゃな、黒檀の拳士殿。否、カエデの子よ」
「!」
唐突に聞いた母の名前に驚嘆し、壮年の男に手を引かれてゲンゾーの傍に有る椅子に腰掛ける老婆。
その皺だらけの顔はまるで孫と対面したかの様に柔らかく微笑んでいる。
「まずは自己紹介じゃな。ワシはネフティス。このパスガノの長をやっとる者よ」
「……察するに名乗るまでも無いでしょうが、儂はゲンゾーと言います」
パスガノの長を名乗る老婆、ネフティスにそう告げる。
それよりも間近でその老婆を見て気付き、ネフティスはまた笑った。
「お主もワシも、『特異体質』同士の黒髪じゃなぁ」
そう、このネフティスの髪は黒い。
今まで黒髪の人間には一人として出会わなかった。
が、ネフティスはゲンゾーと同じ黒髪なのだ。
何を聞こうにもまず情報の整理かと考える中、それを見透かしたようにネフティスが応えた。
「お主の疑問はゆくゆく話そう。今は為すべき事が有ろうが」
「………でありますな」
先ずはよく動かないこの身体をどうにかすべきかと、息を深く吐いて冷静さを取り戻す事を優先する事にした。
ステータス更新
NAME・ネフティス
レベル・86
クラス・ジプシークイーン
筋力・H(EX〜H)
耐久・H
敏捷・H
魔力・EX
対魔力・EX
属性・死
保有スキル
予言・EX
読心術・EX
言霊・A
干渉魔導・EX
治癒・A
俯瞰の目・A
固有スキル
ジプシー族・A
精霊の加護・A




