倉庫街の暗部
「この大バカ者が!ここに送り込まれ幻獣はあれ一匹だったんだぞ!あのチビはあくまであの幻獣な対する人質だと何度も言ったであろうが!」
とある倉庫街にて怒鳴り声が響き渡った。
そこには小太りの身形の良い男が憤慨しており、その怒鳴り声を聞いているのはガロンだ。
「け、けどさ、こいつ精霊殿のガキなんだよ。こいつ使えばベリナスの旦那も……」
「やかましい!こいつは魔法使い一派の護衛役に過ぎぬわ、戯け!ベリナス閣下には私から告げておく!精々相棒とやらが連れて帰っているネフティスの孫娘を待っておれ!」
男はそう残して倉庫から消えた。
残されたのは手枷をかけられたチコとわなわな震えるガロンだ。
「畜生……ああ畜生!何を偉そうに俺を怒鳴ってんだぁあ!俺は剣の天才なんだよ!皆して俺をバカにしやがってぇ!」
ガツンガツンと柱を蹴り付けて苛立ちを発散する。
そんなガロンの元に音も無くケウデスが現れた。
「うるさいぞ、潜伏がばれる」
「うるせぇのはお前だ!俺に指図すんなっつったろうが没落坊っちゃまよぉ!」
肩で息をしてがなり散らしたガロンはやがてケウデスが誰も連れていないのに気付く。
「おい、攫ったあの阿婆擦れはどうしたんだよ!?」
「逃げられた」
「はぁ!?」
そして長剣を抜いて切っ先をケウデスに向ける。
「てめぇいい加減にしろよ!何がヴィルコラク団だよ!何が最強の傭兵団だよ!てめぇの尻拭いばかりしなくちゃならねぇ俺の立場はどうなんだ!」
「知らん、任務にそんな事を考えるという物は無い。誘拐と同じくな」
「っ!」
そして気絶しているチコを担ぎ、倉庫に有る檻を見上げる。
「貴様、鍵を壊したな?」
「はぁ?お前が鍵を渡さねえから悪いんだろ!」
「やれやれ」
と、ケウデスはその檻の隣に有る比較的小さめな檻にチコを放り込んだ。
「何でこいつとっとくんだよ?売りをやらせようにもこのガキまだチビ過ぎるじゃん。とっとと殺そうぜ」
「保険だ」
ガロンを無視してケウデスは倉庫脇に置いてあった箱を開き、中から手甲と脚甲を取り出してはめた。
(何故かな、奴がまた来る気がする……にしても、私がまた『これ』を使う気になるとはな)




