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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第二章・ジプシーの意味は放浪者
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技術の応酬

驚嘆に汗を垂らしたのはゲンゾーだけでなくケウデスもだ。

今の一撃で確実に仕留めたと思った。

が、目の前のゲンゾーはムエタイの技巧でこれをかわし、今構えている。


(成る程、只の小坊主ではない、か)


すっと両手の平を突き出す様に構え、ゲンゾーを見据える。

対するゲンゾーはその構えを検分する。


(さて、この構えは空手の前羽の構えに近いが……『何を』想定した拳法か)


この世界にも当然格闘技はあろう。

問題は何を相手にするかを想定した格闘技かだ。

例えば空手やムエタイは人間を一撃で屠る技巧が多い。

そして前者は後の先を取る技巧が多く、後者は先の先を取る。

コマンドサンボや柔術は武装した相手を確実に無力化する為に被害が少なくかつ仕留めやすい絞め技や関節技が多い。

果てはルアの様な人体の破壊に特化した武術も有った。


(しかしこの世界には先の様な巨獣もおる。果たして人間のみを砕く技巧か)


チコへの懸念を一先ず他所に置き、今は眼前の敵を果たす事に専念する。

と、見の構えと遠間に相手にする為、突き放して戦う形意拳に構える。

その構えにケウデスも訝しんだ。


(腰に拳を添えただと?ビューロー流でもアテイ流でもない構えか……)


すっと体勢を前に移し、


(来る!)


後ろ足を蹴飛ばして前に出るケウデス。

そのまま手の平を突き出してゲンゾーの眼前に迫らせ、


(これは虚!本命は……!)


鋭い蹴りを横から迫らせた。

手の平でゲンゾーの視界を制限し、回し蹴りで決める技か、しかしてゲンゾーは素早く見切り、


「!」


瞬歩で距離を詰め、拳を開いて素早く八卦門に構える。


「ぬん!」


右掌打を鳩尾目掛けて放つ。

が、


「ちぃ!」


振り下ろした手を素早く戻し、腕を組む様に掌を受け止めるケウデス。

このまま勢いに乗って下がり、距離を取ろうと脚を浮かせる。


(若いの!)

「!?」


はずだった。

しかしゲンゾーはそこから更に手首を捻り、寸頸によって腕を弾いた。


「なっ!?」


そしてガラ空きになった胴体に、


「ぜぇやぁっ!」


残しておいた左の正拳が刺さった。


「ぐおっ……!」


水月に刺さったそれはケウデスの身を抉り、そして、


「!?」


カウンターに放たれた手刀がゲンゾーの首筋に刺さった。

思わぬ所から迫ったその手刀は脚を浮かせていた手刀にも関わらず鈍痛を生み、お互いに抉られた部位を庇う様に下がった。


(あの小僧……水月を殴られつつカウンターを放つとは……!)


しかしダメージは明らかにケウデスの方が大きく、嘔吐感と震える膝を抑えて構え直す。


(何だあのゼロ距離からの衝撃は!?やはりこいつ只者ではない……私の知らない全く新しい武術か!)


その技の幾らかの応酬の中、ゲンゾーは一つ確信する。


(しかし間違い無い。この小僧の使う武術は明らかに巨獣ではなく対人用の一撃決殺の武術、それも先の後を取るフェイント混じりの武術か!)


一つは手の平にわざと意識を向かわせた事。

武器を持った相手ならば手の一つは犠牲にして攻めるのだろう。

そしてもう一つには執拗に首元を狙う技だ。

首元は最も回避が難しく、かつ一撃で人体を機能停止させる可能性が高い。

故に武技ではそこを狙う物も多い。


(なれば……)


すっとルアに構え、ケウデスは僅かに訝しむ。


(突き出した肘で攻撃を受け止め、隠した右手で攻める気か。ならば!)


またも爆ぜる様に進み出てゲンゾーの手前で低く体勢を落とし、後ろ回し蹴りを放つ。

その回し蹴りを肘で受けるゲンゾーに、


(かかった!)


その肘を脚で強引に引き剥がす。

そして露わになった脇腹目掛けて正拳を放った。


「!?」


瞬間、ゲンゾーのほくそ笑みが見えた。

何かと思う間も無く、肘がケウデスの脚を滑る様にそのまま下がり、腕を抱き込む様に捉え、くるりと回ったゲンゾーの腕が肘を抑える。


(まさか!?)


思うも束の間、一瞬にしてゲンゾーは背を反らし、ケウデスの右肘が嫌な音を響かせた。


「がぁっ!?」


怯んでから次に知覚出来たのは、自身の喉仏に背刀を叩き込むゲンゾーであり、そこからの意識は闇に沈んだ。

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