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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第二章・ジプシーの意味は放浪者
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剣士の戦い

「外は片付いたみたいだね。チコ、もう結界解いて大丈夫だよ」

「はい」


宿屋内、宿屋そのものに結界を張っていたチコにエーリカが告げ、充てがわれた一室にいた一同は安堵の息を漏らして双子妖精がひらりと身を踊らせる。


「じゃあアノーラは下のみんなにもう大丈夫だよって言ってくるね」

「私も行きます。アノーラだけじゃ心配ですし」


ぱたぱたと去る双子妖精を見届け、エーリカは溜め息を吐く。


「……しかしあれだね、とんだ遠足になったもんだ。明日はさっさと帰ろう」

「そうですねー。早く美味しい料理食べたいですよぅ」

「……それが来た理由だったんだっけね。しかし」

「エーリカ!」


何かを言う途上、グレタがエーリカをもたれていた窓から引き剥がす。

瞬間、窓が壁もろとも切り刻まれ、雷が落ちて吹き飛ぶ。


「なっ!?」


エーリカが驚嘆に目を見開き、グレタが剣を抜いて部屋の一同を庇う様に立つ。


「あー、やっと切れたぜ。しかし役に立たねえ畜生だったな」


そこにはガロンがおり、長剣で肩を叩きながら部屋に入って来る。


「これもケウデスのせいだけどよ、まああいつの尻拭いはしてやるか」


そして部屋の中を見渡し、ふんふんと唸る。


「どれが予言者でどれがベリナスの旦那に言われてたのだっけな……」

「予言者……?」


そのワードにグレタが眉をひそめ、セレが僅かに肩を震わせる。

その一連の動きを見てガロンはにやりと口の端を吊り上げた。


「みっけ」


そのままグレタを睨み、鼻で笑う。


「やめときなよお嬢ちゃん。女は男に媚び売ってるのが精々だって。剣のお稽古なんて似合わないよ」

「……お稽古にもならんかもな、貴様程度では」

「………ハ」


グレタの返しに乾いた笑い声を漏らし、その長剣をダラリと下げる。


「言うじゃんか。痛い目見なきゃ……」


そしてその剣が煌き、


「分かんないのかなぁ!?」


グレタの細剣がそれを受け止め、火花が散る。

それを見て一瞬不快そうに表情をしかめ、直ぐに鼻で笑うガロン。


「お稽古は頑張ってるみたいだねぇ。けど……!」


そのまま長剣で細剣を弾き、長細い腕を使って遠間からの斬撃を幾重にも放つ。

細剣故リーチの差は歴然であり、幾つもの斬撃がグレタを襲う。


「ほらほら!早く何とかしないと丸裸にひん剥かれちゃうよ!」

「………!」


無言で剣戟するグレタはやがて半歩間合いを取り、溜め息を一つ吐いてからいくらか刻まれた上着を脱いだ。


「リヴァレ流か」

「……へぇ、知ってるんだ」

「剣聖リヴァレの編み出した流派だ。知らぬ剣士の方が少ない」


そしてグレタは右脚を突き出す形で低く構え、細剣の切っ先をガロンの目線に合わせて左手を背中に回す。


「技を見せすぎたな。さて、『お稽古』の時間だぞ」

「言うじゃんか……弱い犬程よく吠えるって……ねぇ!」


そしてグレタの挑発に乗って上段に長剣を振りかぶるガロンは、


「っ!?」


眼前に細剣の切っ先が瞳に迫っていたのを察知し、すぐさまかわす。


「このアマ……!?」


そのまま横薙ぎに払い首を払う一撃が迫り、長剣の腹で受け止める。

そして脇腹に蹴りをくらい、ガロンはよろめきながら間合いを取ってグレタを睨んだ。


「何俺を倒せる気分出してんだぁ!?」

「気分ではない。貴様程度なら倒せる」

「ほざいてろ!」


そのまま再び長剣を乱雑に振るうがその悉くをグレタは捌き、


「調子に乗ってんじゃねぇよ!」


渾身の一撃を繰り出すべく振りかぶったガロンに、


「っ!?」


グレタはその掌に握られていた長剣の柄を弾き、長剣を屋根に突き立てた。

そのまま切っ先を鼻先に突き付け、ギロリと睨め付ける。


「なんで……俺の方が間合いが……」

「言ったろう、技を見せすぎだと。もうお前の間合いは測れた」


技の応酬の中でグレタはガロンの間合いと一撃の予備動作を見抜き、パターン化した上で今度は自分の間合いを錯覚させる構えをしたのだ。

突き出した脚は進めばその分間合いが伸び、細剣を目線に合わせる事で細剣そのものの長さを計り難くさせる。

それ故間合いを短く見積り過ぎたガロンは安心出来る間合いで構えているつもりが攻撃範囲で隙を作った、ただそれだけだった。

しかしこの快勝にもグレタは表情をしかめる。


(これでレベルは私と同じかそこらか……ふん、情けなくなるな)


自分もこんな風に見られてはいないだろうか。

そう思いつつ今朝方一方的に痛め付けた強敵への対策を考えていた。

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