巨獣突貫
迫る巨体を捌き、素早く股下の心臓部に拳を放つ。
「っ!」
まるで鉱石を素手で叩いたかのような感触に歯を噛み、距離を取って擦りむいた指の第二関節を見る。
(おのれ……下手な金属より更に硬いの!)
素早く掌を開いて慣らし、骨には影響が出ていないのを確認してから反転するグリンブルステイン目掛けて駆け出す。
「ぜぇっ!」
カウンター形式でグリンブルステインの眉間に足刀を放つ。
当然止まらないがそのまま脚を返してグリンブルステインの背に回り、
「かっ!」
膝を叩きつける。
しかしグリンブルステインは意に介さず身体を跳ねてゲンゾーを振りほどいた。
「何と頑健な……!」
くるりと空中で身体を折りたたんで体勢を整え、入れ替わる様にエリルが飛び出す。
「野郎!」
砕けた建物から拾ったのか、牛刀のような物をその膂力で叩きつける。
が、完全に金属のそれにぶつけ合わせたが如く牛刀はへし折れ、グリンブルステインは牙をエリルに踊らせる。
「だったらこいつで!」
その牙が届く前、アリーヤが槍を立てると奇妙な空気の揺れが見えた。
それがグリンブルステインの周囲に達するとグリンブルステインは明らかに動きを緩め、酩酊した様な千鳥足になった。
「急げ!脚なら止めてやる!」
「だがどうやってだよ!?」
「それは儂らで考える…ぞ!」
千鳥足のグリンブルステインの鼻先、下顎を揺らす様な素早い手刀を放つ。
脳を横に揺らして脳震盪を起こす技巧だ。
しかしそれが却ってグリンブルステインの戦意をなまじに火を付けたか、そのままグリンブルステインは突貫してゲンゾーが吹き飛ぶ。
「ゲンゾー!」
エリルはそれを見て奥歯を噛み、掌に魔力を乗せる。
『爆ぜろ!』
詠唱と共に迫るのは5つの巨大な火柱。
その火柱はグリンブルステインの体に直撃するが、
「ああ畜生…!予想はしてたけど腹立つぜ!」
燃え盛る火の中、グリンブルステインは傷一つ無くエリルを睨んだ。
瞬間、グリンブルステインはエリルの視界から消える。
「上だ!」
アリーヤのさけび声にエリルははっと上を見る。
そこに見えたのは、
「とっ……!」
(飛ぶ猪なんて聞いてねぇぞ!?)
流星の様にエリル目掛けて迫るグリンブルステインだった。




