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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第二章・ジプシーの意味は放浪者
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治癒魔導

魔力検査をさっくり終えた一行はさっそく市場へ白米探し、


「とはいかなんだか……」


魔力切れの結果、身体中の倦怠感が抜け切らず、むしろ悪化の一途を辿っている。

曰く日を置けば置く程に倦怠感が強まり、魔力補充完了の際が最も倦怠感が酷いらしい。


(身体のどこぞに有る魔力精製器官が活動している間はとにかく気怠くなるとな)


取り敢えず白米探しは明日になり、今日一日は宿屋にて泊まる事になった一行。

外泊に浮かれる双子妖精とおっかなびっくりふわふわ兎娘は充てがわれた部屋に篭って何やらどたんばたんと遊んでいる。

エーリカは飲みに出かけ、グレタは部屋で今朝の休養中でセレも同じく部屋だ。

エリルとチコは階下の食堂にて食事中。

そこそこな宿屋がとれたのが幸いしたか、そう覚悟していた程汚くはない。


(しかし儂さみしいでな……)


ほろりと疎外感と情け無さに涕泣し、おまけに腹の虫が鳴る。


(飯も食えぬとは……とほほとの)


思考ルーチンが良い具合に堕ちて来た中、小さく戸がノックされる。


「開いとるぞい」


開ける体力も惜しい為にそう応えると戸が開き、ひょいと顔を覗かせたのはエレンだった。


「あんたまだ寝てるの?」

「済まんが儂今日は立てぬ。と言うか喋るのも億劫なほどよ」

「よっぽど魔力量がポンコツなのねあんた」


潤沢な魔力量のエレンからすれば魔力切れと言う概念が存在しない。

しかしこういった症状はよく見ているのか、しかして余りに魔力量の少ないゲンゾーに呆れた様につかつか歩み寄る。

どこかそわそわした様子で額に手を置き、元気の無いゲンゾーと話す。


「何か欲しい物有る?」

「儂ひもじいでな」

「魔力精製器官が驚くから気だるさが抜けるまで食べ物はダメよ。水なら良いわ」

「無体な事を……ひもじい……ひもじいぞい……」


余りの倦怠感のせいか、嗚呼と泣きながらひもじいと繰り返すゲンゾー。

そんなゲンゾーを見て何か決心したのか溜息一つにやや恥ずかしげに口を開く。


「……じゃあちょっと半身を起こして。何とかしてあげるから」

「うむん?」

「気が変わらない内に早くしなさい!」


何故か怒られたが取り敢えずゲンゾーは身を起こし、エレンを見る。


「……ふ、服脱いで!」

「…………儂お嫁に行くまで清らかな身体で居たいのだがブホッ!」

「ふざけてないで早く!う、上だけで良いから!」


ふざけて身を抱くとエレンの平手が刺さった。

取り敢えず何らかの一案が有るのか、そのまま上半身裸になる。

と、エレンは背に回り、その背に触り出した。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………さっきから儂の背に触れてばかりだが、何ぞ有るのかね?」

「えっ?あっ!ああ!ち、ちょっとね!」


何やら咳払いで誤魔化し、やがてエレンは背中の一点に意識を向ける。


『小川の園、琥珀の空、巡れ時の子鹿。汝は器、我は水を持ちてその橋を渡り、星の砂を満たした盃を共に携えよう』


と、詠唱すると不可解な現象が起きた。

異質な物が身体を突き抜けようとし、しかし自分の中には入って来ない。

まるで口に水が当たっているものの、閉じた唇がそれを許さないといった感覚だ。


(ふむ、もしかしてエレン嬢は魔力的干渉で儂を癒そうとしており、しかし儂の属性が無意識に魔力的干渉を阻んでおるのかの?)


ぼんやりと考え、意識してその魔力的干渉を許容する様な感覚を浮かべる。

瞬間、水が入って来る様に身体中に精気が漲り、倦怠感が抜けて行く。


(これが治癒か。しかし意識せねば治癒と言った益になる魔法すら受け付けぬとは……難儀なものよ)


しばらくしてからエレンはそっと手を背中から放し、ゲンゾーは肩を回して立ち上がる。


「治癒魔導とは有難い。おかげで綺麗さっぱり倦怠感が抜けたぞ。礼を……何故顔を背ける」


そして振り返れば赤くなった顔を背けるエレン。

と、そこで合点が行く。


(ああそうか、男の裸体には見る事は愚か触れた事も無かったのか)


精霊殿育ちはもれなくこう言った人間ばかりだったかと気付き、上半身裸だったのを思い出していそいそと着ていた物を着る。


「……チャラだから」

「うむん?」

「だからチャラ!これで朝覗いた事忘れてあげる!」


と、そう言い残してエレンはぱたぱた出て行った。

残されたゲンゾーは頬を小さくかき、


「………あの娘も難儀よな」


小さく笑い、階下の食堂へと向かって行った。

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