表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガーディアン  作者: フライング豚肉
第一章・身体が資本なじいちゃん
4/923

おちびなおじいちゃん

山間の名もなき村に在る一つの家、ベレソアの薪店一階にて。


「ゲンゾー?ゲンゾー?」

「はい、母上」


ゲンゾーとして生きて既に五年程、幸運にも村でそこそこの生活の出来る家庭に産まれた彼は良い子として生きていた。


「お父さんのお手伝いは?」

「終わりました」

「だからってまた山に入って暴れちゃいけません」


そうでもなかった。

山間に作った彼専用の修行の場。

ゲンゾーは暇さえあればそこに籠り、修行に明け暮れていた。

その目的は即ち身体作りだ。

神棚の物からの言に依ればいつかは必ず闘いが待っている生故に。


「しかし母上、儂にはある約束がある故いつ如何なる時にも対応出来るようあらねばなりませぬ。父上や母上に求められた役目は疎かに致しませぬ故、どうかご容赦の程を」

「……なんだろ、ヴァインおじいちゃんと話してる気分だわ。貴方そんな難しい言葉遣いいつの間に出来るようになったのかしら」


溜息を吐きながら額に手を当てるカエデ。

一方のベレソアと言えば、


「お、また母さんに怒られてるのかゲンゾー」


薪を作り終わったのか、汗を拭いながら戻って来た早々にゲンゾーを抱き上げてはにかむ。


「ダメだぞぅ、確かに母さんは怒っても可愛いけど本当は人を怒らせたらダメなんだからな」

「ッ…!もう、ベレソア!」


五年経ってもこれは変わらず続いていたやりとりだ。

最早げんなりするのも飽きた程である。


(やれやれ、毎日見せられるとな、犬も食わぬとは良く言った物よ)


あーあとベレソアの手からひょいと離れ、ゲンゾーは外に向かう。


「あ、こらゲンゾー!」

「暫し遊びに行って参ります」

「そう言ってまた山で暴れる気でしょ!」

「ほーら、やっぱり怒り顔も可愛い」

「だっ、からベレソアもからかわないで!」

(さて、砂糖でも吐いて売れば儲るかね)


なんだかんだで仲の良い両親を置き、山に入る。

既に5歳にして、ゲンゾーはこの山の地形を完全に把握していた。

もはや夜闇の中でも駆け巡れる程に。


(こなす仕事が更に減れば更に身体を鍛えれるが、さて)


あっと言う間に修行場に辿り着いたゲンゾー。

そこでまず行うのは前世の自分が体得した技術、戦闘経験の再確認だ。


(儂が見るに、この世界の文明は西洋中世程度、剣の時代だが…)


ふっと拳を突き出し返す体躯のまま上段蹴りを腰から放つ。


(近接戦ならば刃物より徒手の方が早かろう)


彼は西洋のトゥーハンデットソードや打撃武器には明るく無い。

故にそれらを使う選択肢を消し、素早く、かつ一撃で敵を屠る手段を考えた。


「神棚のに出す条件に銃器を加えれば良かった…なっ!」


軽い体躯故、大振りな技では体幹が大きく揺れる。

が、この身体に技を覚えさせるには必要だ。


(人間の肉体成長に在る三段階の一段階目故な)


一つ目に、動きを覚える事が在る。

幼年期の吸収の早い脳に技巧を叩き込めばかなり早い段階で多くの技を覚え易いのだ。

二つ目に、持久力。

肺活量や代謝など、所謂スタミナをつける作業だ。

これは幼年期を越して11頃からをゲンゾーは見越している。

最後に、純粋な筋力。


(ま、高校生ぐらいが一番筋肉付きやすい年頃であるしな。まぁ取らぬ狸のなんとやら、では有るが)


揺らぐ体幹を抑え、何とか技を繰り出すゲンゾー。


「何はともあれ、今は反復練習だ…なっと!」


空を薙ぐ肘打ち、それらは確かにゲンゾーの血肉となっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ