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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第二章・ジプシーの意味は放浪者
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おじいちゃんらしい悩み

「して、御老人、飯を集りに来た訳ではなかろう。用件や如何に」

「じゃあお茶をくれんかの」


と、警戒するゲンゾーを前にエイトリはあっけらかんと言い、リリアの淹れたミルクティーに満足げに頷き、ゲンゾーはこめかみを叩く。


「………御老人、儂は其方をまだ信用しておらぬ。何せ襲撃されて三日、間者の一人や二人以前から有ってもおかしくないのでな」

「何じゃい、お主こそここ最近見なかった面じゃろう。お互い様じゃ」

(そう言われると返せなんだな)


同じ様にゲンゾーはミルクティーをすすり、しかし表情を落とす。


「あのぅ、お口に合わなかったですか?」

「………うむん?いやそうではない。済まん、考え事をしておったでな」

「何じゃい小僧、巨乳ちゃんの出した乳が飲めんのか?贅沢じゃのう。86年生きてこれ程興奮する乳は無いぞい!」

(儂より若いではないか。そしてこの小僧、いい加減叩き出すか)


穏やかに青筋のみ立てるゲンゾーだがとりあえずしゅんとするリリアにフォローする。


「リリアよ、儂はそもそもこの世界…いやさ、この街の食事が体に合わなんだでな、まだ舌が慣れておらんのだ。儂の狭量な舌を許しておくれ」

「体に合わない?」

「うむ。ああいかんな、意識すれば蕎麦や味噌汁、そして何より白米が恋しくなって来おった。贅沢は敵よの、喝」


望郷にミルクティーを飲めば甘い。

と言うより激甘だ。

リリアはこういった子供舌な為、過剰な味付けになり易い。

盛れば盛るほど良くなると思うタイプだ。


(厨房には立たせられんの)


フォローされたのかよく分からないリリアは更に分からない食事の名が挙がり、更に首を傾げる。


「白米……ほっほぅ、龍国の主食じゃな?」


代わりに応えたのはエイトリだ。

そして意識してしまったゲンゾーは聞き耳を立てる。


(何と、この世界にもアジア圏に当る地方は有るのかね。祖国万歳。御老人、更に続けるのだ)

「確かこの国では余り生産してなんだのぅ。しかし穀倉地帯の有る商業都市のパスガノに行けば或いは」

「パスガノ?」


返せばうむと応えられる。


「パスガノはこのトラジオンの南にあるジプシーの街でな、ジプシーの長たるジプシークイーンの予言によって作物の収穫高を予測して計画生産をしておるのよ。おかげで大穀倉地帯になっておるのじゃ」

「何と、バルミアの底を支える食の街かね」


ふむと唸り、欲に従うか使命かを天秤にかける。


(はてこの世界に有給休暇は有るか……)

「この耳寄りな情報の対価はお主の妹を揉ませてくれれば良いぞ?」

「小僧、いい加減にせぬか」

「ふむ?あぎゃー!顔を締めるなー!」

「この情報の対価は貴様の腹に収まったキッシュで買い取っておく」


ぎりぎりとこめかみを指圧で締めながら応えるとリリアが表情を明るくしていた。


「ではパスガノに行けばそのハクマイって言うのが手に入って黒檀さまの郷土料理が食べれるのですね!」

「いや、護衛の任が有るでな、おいそれと精霊殿を離れられんよ」

「衛兵隊さん達ががっつり居ますよぅ!それにまだ黒檀さまの歓迎会もしてませんよぅ!その極上郷土料理で歓迎会したいですよぅ!」

「作るの儂になるんじゃが……」


どうやらリリアは行きたいらしいが、沈黙を守っていたエーリカがここで口を開く。


「ダメだよリリア。ゲンゾーはあくまで使命を全うする為にここに居るんだしさ。そしてお爺さん、もうゲンゾーに悪い事吹き込むのは止してくれない?」


暗にこう告げている。

それ以上はオエコラフ都督の意を曲げる事だ、と。

しかしエイトリはにやりと笑う。


「悪い事では無いじゃろう?何よりさっとパスガノに行き、食材を手にさっと帰るだけよ。隊商に付き添えば一日もかからん」

「………」


行くムードが広がりつつある。

一級技官として幕僚会議にも出席出来る地位故禁じれば禁じれる。

しかしここでは身分を隠しているし、幕僚会議の結果も即日施行される訳でもない。

加えてリリアに行きたい行きたいとせがまれ、ぶんぶん振り回されるゲンゾーは明らかに押されムードだ。


(筆頭文官殿は何をお考えか!)


内心歯噛みしながらもエーリカは立場上これ以上言えず、振り回されるゲンゾーはやがて言う。


「分かった分かった。隊商に付き従ってさっと行ってぱっと帰るでな」

「やったぁ!黒檀さま素敵ですぅ!」


かくしてパスガノ行きを決めたゲンゾー。

因みにエイトリが食べたキッシュはエリルの分であり、エリルは涙を飲んで堪えたと言う。

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