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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第一章・身体が資本なじいちゃん
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守りし者

漆黒の髪に徒手の戦士は、マガフの触手を手刀で裂いてグレタを抱き、見知らぬ赤毛の獣人族の青年は力任せにエーリカを触手から引き剥がして地に立った。


「このブチ込んだ間抜けに事情聞こうって探したら…まさか衛兵隊全滅たぁな、嫌な直感ばかり当てやがるな、ゲンゾー」

「全くだ。下らん手間を増やさせおって」


と、惚けるグレタとエーリカを放してやると二人はザグラスとマガフに向き合う。


「覚悟は出来てような、蟲使い」

「………」


ザグラスは何も言わずに離れ、マガフが前に出る。


「そら、汚名返上の機会をやろうぞエリル」

「言うと思った…ぜっ!」


と、エリルは手頃な柱をへし折り、武器として猛然とマガフに向かっていった。

そしてゲンゾーはへたり込むエレティーナの目線に合わせて話す。


「先の話はな、儂は正直まだ決め兼ねてなんだ。其方から幾らか聞きたい事が有る故、その後決めよう」

「………」


言うと決めたのに、いざ目の当たりにすれば上手く言葉が出ない。

と、逡巡の間にゲンゾーは立ち上がり、ザグラスと向き合う。


「半日振りだの、蟲使い。もう全快したかね?まだ痛むだの、言い訳ならば今聞くから後で言ってくれるなよ」

「………何故邪魔をする、黒壇の」

「異な事を言う。無作法な行いは窘めて然るべきであろう?」

「違う、そうではない」


と、ザグラスはかぶりを振り、続ける。


「貴様は私の仲間にはならずとも、バルミアの味方にもなり得まい?貴様はこの国が、もっと言わばそこの魔法使いめの先代が貴様の母、カエデにした仕打ちを知らぬのか?」

「………何?」

「っ!」


その言葉に、エレティーナは苦虫を噛み潰したような表情を作る。


「貴様の母、カエデは本来ここの主人たる者だったのだよ」


精霊殿の中、ザグラスは告げ、ゲンゾーは動じない。


「だが先代がそれをよく思わなかったのか、カエデが務めに消極的、更に異国の者であると言った理由で独り身に追い出したのよ。遠い異国の中な」


故郷から遠く離れて呼ばれたのに、妬み僻まれ、挙げ句の果てに何の後援も無く追い出した、そう告げたのだった。

そしてその原因はそこの娘の先代とも。

エレティーナに目を向け、ゲンゾーは静かに言う。


「本当かね」

「………ごめ………なさい……ちゃんと……言おうって……」


搾り出すかの様に紡がれる言葉。

懺悔の意味か、崩れた表情で涙だけを必死に堪えている。

表情を落としたゲンゾーにザグラスは続ける。


「そこをどけ小僧。無為な争いは私も本意ではない。協力しろとまでは言わん、何も言わずにあの獣人族と共に去れ」


その言葉にゲンゾーは、


「そうか」

「!」


と、掌打を繰り出した。

すんでの所でかわしたザグラスは、安堵の笑みを浮かべるゲンゾーを見て目を見開く。


「貴様、聞いていなかったのか!?」

「聞いていたとも。そして礼を言おう、長年の謎が氷解したとな」


力強く構え、惚けるエレティーナを背にゲンゾーは不敵に笑む。


「あの男、デビオスは魔法使いたる我が母を狙いガルガダス事変を起こし、国力低下を図ったのか。そして儂の母は不幸の内に荒野に送られたと?笑止千万!」


そう、ベレソアと共にいた彼女は、いつも笑ったり怒ったり、感情をコロコロ変える程に豊かな心を持っていた。

幸せだった。


(大方、父上と共に駆け落ちなさったのだろうな)


そしてその憎まれ役として、エレティーナの先代が名乗りを上げた、と。

そう、かつての自分と同じくカエデは、


(穏やかな午睡を良しとしたのだな)


栄光も無く、ありふれた、されど掛け替えの無い日常を選んだと。


「迷いは晴れた、ここに敢えて名乗ろうか」


力強く構えたまま眼光に力を込める。


「儂の名はゲンゾー!義賊『赤枝』の長!守りし者を志す者よ!」

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