思考の果ての疑惑
チコを待たせていた茶店に着くとボロボロのエリルもいた。
ゲンゾー入るなり表情を明るくするチコと、表情を落とすエリル。
「兄さま!ご無事でなによりです!」
「ゲンゾー…その…な」
「説教と修行は帰ったらたんまりしてくれる」
「やっぱり修行かぁ…」
とほほと項垂れるエリルを他所にテーブルに付き、事のあらましを二人に話す。
「つまり精霊殿の警護、と言う事ですか?」
「恐らくはそうなろうが」
チコは釈然としないといった雰囲気で、エリルはふふんと自慢気になる。
「俺たち赤枝の名は既にトラジオンにも知れ渡っていたってぇこったな」
「否、そういった風でも無かったぞ」
「ありゃ」
こけるエリルにゲンゾーは続ける。
「どうにも儂に何ぞ用事が有るらしくてな、エリルや、噂好きの其方の役所よ、精霊殿について分かる範囲で話してくれぬか?」
「精霊殿か」
ふぅむと顎に手を当て、エリルは話す。
「元々精霊殿は人っ子一人居ない精霊を下ろす儀式の間だったって聞いてるがな、その例の魔法使いとやら居るってこたぁ何らかに事情が変わったのかね?」
つまり祭礼用の場であり、管理する者は有れど住まう者は本来居ないと言うことかと判断し、ゲンゾーはふと思った事を口にする。
「何ぞこの国はその魔法使いとやらが不足しておるのかね。魔技を使う者などスラムにも溢れておったようが」
「兄さま、彼らは魔導士、魔法使いとは別です」
と、ここでチコが口を開く。
「魔導士は属性魔法、火、水、氷、風、雷、地、力、闇、光、音の十元素の内自らが宿す属性を行使する者であり、主に破壊活動を行う者です」
「では魔法使いとは?」
「魔法、即ち『魔力の法』を行使する者です」
それは規模の違いだとチコは応える。
魔導士らは極めれば災害級の天変地異を起こせるが、魔法使いは初めからそれが可能であり、それ故極めて不安定。
例外は過去に幾らか有ったかも知れないが、極めて危険なその存在故に国の管理に置かれる事が大半だと言う。
故に、エレティーナの様に国に『飼われる』形で居るのだと。
(差し詰め、魔導士が機動兵器ならば魔法使いは戦略兵器といったところか)
簡単に落とし、ゲンゾーは続ける。
「これは恐らくガルガダス事変に起因しているのやも知れぬな」
「!」
その言葉にエリルもチコも合点がいったと言わんばかりにゲンゾーを見る。
「魔法使いの戦略的優位性が正しくこのバルミアにて理解されておるのなら、ガルガダス近くの最大都市トラジオンにその魔法使いを置き、加えてそれに準ずる存在をまとめて管理して有事に備える。なればそれに相応しく力の制御が行えそうであり、皇族達が納得しそうな神輿に押し込もうとする」
「そのための精霊殿って訳か」
二人も合点がいったのか、内チコが話す。
「では兄さまが排した件の召喚士は」
「うむ、恐らくはこのバルミアに仇なす何処かからの刺客であろう。確かヴィラレスク委員会だのと宣っておったな」
そう答えながらゲンゾーは更に考えていた。
(そう、こんな結論には少し頭を回さば辿り着くは容易。寧ろ現状を話して理解を求め、協力を求める所であろうが)
故に、と、
(あの娘…何を隠そうとしておったのだ?)




