精霊殿にて
エレティーナの導くままに従って進む中、とうとうエレティーナの住んでいるであろう屋敷に着く。
そこは、
(でかいな)
屋敷と言うより大神殿と呼んだ方が相応しい荘厳な建物だった。
と、胸の中のエレティーナがぐいぐいと胸を押す。
「もう歩けるから降ろして……」
「む、そうかね」
一々確認せずあっさり降ろすゲンゾー。
矢張り女性としていつまでも誰かに抱き上げられたままは恥ずかしいのだろうと考えていると大神殿から声が聞こえた。
「エレンさまぁ〜!」
はぅはぅと力無く走って来る兎耳の獣人族の女性、エレティーナのお付きであろう彼女を見てゲンゾーは更に、
(こちらもでかいな)
女性らしい体にふむと唸り、同時に自らを小突く。
(いかん、矢張り肉体年齢に引っ張られておるのか。落ち着け儂、貴様は既に100は越す爺も爺ぞ)
そんな自己嫌悪も他所にお付きらしい女性はエレティーナの前ではぅはぅ息を整え、暫くしてから縋る様に言う。
「エレンさまぁ!ご無事でなによりですぅ!リリアめは大変心配しておりましたぁ!そのせいか今日もスープのおかわり二杯しか出来ませんでしたぁ!」
(随分食っとるぞ娘よ)
内心冷ややかに突っ込むゲンゾーと裏腹にエレティーナは優しく言う。
「ごめんねリリア、もう勝手に出歩いたりしないわ」
「エレンさま!遂におさんぽを諦めて下さるのですねぇ!」
「んー」
「エレンさまぁ!言質!言質取りますよぅ!」
と、そこで初めてリリアと呼ばれた女性はゲンゾーと目が合ってたじろぐ。
「はぅ!男の人!」
「うむん?」
そのままエレティーナの陰にかくれ、怯えた様子でゲンゾーを見ている。
何かとゲンゾーは考えるが、エレティーナが答えを寄越す。
「私達のいるこの『精霊殿』は男子禁制だから、そこで生まれ育ったリリアはあんたに耐性が、というか男に耐性が無いの」
「ああ、それは失敬。では儂はこれにて」
と、合点がいったゲンゾーはそのまま踵を返そうとするがぐいと服をエレティーナに引かれる。
「待ちなさいよこの立枯れ喧嘩師!」
(何だその渾名は)
いよいよ帰りたくなったゲンゾーだが立場を考えると引くに引けない。
取り敢えず振り返ってひそひそ話す二人を見遣る。
「リリア、よく見て。怖いのは分かるけど、ほら、こいつの頭」
「頭?頭…頭…この人意外と睫毛長いですよぅ」
「そこじゃなくて髪!ほら!」
「髪?髪…髪…あっ!ああぁーっ!」
と、リリアは叫び声を上げ、目を光らせながら詰め寄る。
「貴方が黒壇の拳士様ですかっ!?精霊様が預言為された護国の勇者様ですかっ!?」
「むん!?い、いや暫し待たれよお嬢さん!訳が分からぬ!こら、やめぬか!儂の腕に触るでない!こ、これ!」
ぺたぺたと体のあちこちを触られ、柔らかいリリアの体がふにょんもにょん。
(あ、気持ちい…い訳無かろう!婚前の女性が妄りにその…ええい落ち着け儂!儂は100歳儂は100歳儂は100歳!)
「喝ーっ!」
と、ゲンゾーが叫ぶとリリアとエレティーナはびくりと震え、落ち着きを取り戻したゲンゾーは溜息を一つ。
「御主らで何を納得して何をはしゃいでおるかは知らぬ。だが儂はそれが面白く無い。見世物扱いしたく儂を呼んだならば儂は帰らせてもらう。連れが待ってるでな」
そう、チコやエリルが待っている。
踵を返し元来た道を辿り始めようとすると、
「待って!」
エレティーナが叫んだ。
その悲痛な声音に怪訝そうにも振り返るゲンゾー。
振り返ったその先の表情は、今にも泣きそうな少女の貌だった。
「お願い、分かって……精霊様からの言葉で詳しい事は話せないの。でも私達…ううん、この国に貴方が必要なの」
一息、そして、
「この精霊殿を『守って』欲しいの」
「………」
只ならぬ表情に、この世界に寄越された意味を思い出す。
幸せな結末の為に、守る存在として在れ、と。
かつて守れなかったささやかな幸せ、かつて失った大事な絆、そして、
(前世の業、か)
思い出したくもない、世界中の紛争地帯で味わった苦い記憶。
穏やかな午睡も、ささやかな幸せさえも望めず無為に死んでいった多くの命。
そしてそれらを奪ったこの掌。
(ここを守れと、そう宣うかね、神棚の)
ぎゅっと掌を握りしめ、溜息を一つ。
「妹に友を待たせておる。一先ず考えさせてくれ」
「っ…!じゃあ…」
「明朝、ここに参ろう。その時如何するか伝える」
そうとだけ残し、ゲンゾーは去っていった。
ステータス更新
NAME・エレティーナ
レベル・?
クラス・魔法使い
筋力・H(EX〜H)
耐久・H
敏捷・H
魔力・EX
対魔力・D
属性・光
保有スキル
浄化・A
治癒・A
異種対話・A
光魔導・EX
固有スキル
精霊の加護・A
NAME・リリア
レベル・34
クラス・神官
筋力・H(EX〜H)
耐久・H
敏捷・H
魔力・B
対魔力・D
属性・風
保有スキル
念話・A
千里眼・A
固有スキル
獣人族・A
精霊の加護・A




