『じいちゃん』への別れ、『ゲンゾー』の始まり
見開く瞳には、優しく自身を見つめる母の瞳、溢れる血、そして母の体を穿つデビオスの貫手だった。
動揺しきり、硬直するゲンゾーの頬をカエデは撫でる。
「もう………本当に…いつまでも…世話を…焼かせる子…ね…」
「は、母上!」
我に返ったゲンゾーはカエデの背に居るデビオスに向かおうとするが、
「!?」
パチリと音が響き、弾かれた。
見れば薄く結界が球体に張られ、デビオスも明らかに動揺している。
『ゲンゾー』
「!?」
突如として響いたカエデの声に母を見る。
穏やかな、死に瀕しているとは思えない優しい瞳でゲンゾーを見ているカエデ。
『チコを守ったのね。母さん、もう貴方たちを守ってあげられないから、代わりに貴方が守ってくれる?』
「母上…!」
死に瀕して尚我が子を守ろうとするカエデに、女は弱し、されど母は強しと言う言葉が浮かぶ。
家族を持たなかった自身には実感の無い言葉だったが、今理解する。
誰よりも強き存在だと。
「母上…!父上にも誓いまする!」
どこか、お客気分だったと自省する。
そう、自分は守る為にこの世界に遣わされたのだと。
「儂は、ゲンゾーはあらゆる危機よりその身の届く限りの全てを守ると!貴方と父上の愛に誓いまする!」
はっきりと、自らに言い聞かせるかの様に告げ、カエデは安心したかの様に微笑んだ。
『ありがとう。あなたたちのゆくすえ、みた、かっ、いつま、も、あいして』
涙を零しながら必死に頭に語りかけ、やがて光を放ち、
「!」
結界の中、デビオスと共に消えた。
残されたのは、守られたゲンゾーのみ。
「………」
(ああ)
命の気配の消えた村の中、ゲンゾーは空を仰いだ。
(ちゃんとこの体は…涙を流してくれるのだな)
ステータス更新
レベル・1
クラス・不明
筋力・E(EX〜H)
耐久・G
敏捷・D
魔力・H
対魔力・H
属性・不明
保有スキル
陣地作成・F
徒手空拳・D
見切り・G
固有スキル
異界の魂・A
不屈の精神・A