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ガーディアン  作者: フライング豚肉
第三章・トラジオンのカリギュラ
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ポンコツ魔導

グレタが人知れず涙流す一方、エーリカは宝石の入った皮袋片手に精霊殿を歩いていた。


「竜胆。りーんーどー」


竜胆を探しているのか、呼びかけるが当の竜胆は全く姿を見せない。

ふぅと溜息を吐き、じゃらじゃらと皮袋を揺する。

と、向かいの通路からエレンが現れた。


「どう?見つかった?」

「んや。尻尾一つ見ないね」


彼女もまた探しているのか、エレンはエーリカに寄る。


「本当にゲンゾー以外には懐かないねあの子」

「全くだよ。もうパスガノで食ってから三日ぐらい経つから腹空かしてるはずなのにねぇ」


どうやら非常に燃費効率の良い幻獣なのか、竜胆は既に三日は宝石を食べていないらしい。

と、軽く汗を水で流したゲンゾーが現れる。


「おう、二人とも、どうかしたかね?」

「ああ、ちょうど良いわ。竜胆探すの手伝っ」


と、ついでに竜胆がエレンらの背後から飛び出し、ゲンゾーの肩に乗った。


「ふぬむ、これ、竜胆や、そう激しく戯れつかんでくれぬかね」

「…………近くに居たのかよ」


エーリカがげんなりし、エレンは竜胆の声に耳を傾ける。


「父さま父さまって……ほんとあんたにしか懐かないわね」

「はっは、儂の仁徳の高さを分かっとるのだ。のう竜胆や」


ゲンゾーが文字通り猫可愛がりに喉を撫でてやるとごろごろ声を鳴らす竜胆。

そしてエーリカはかぶりを振るい、宝石の入った皮袋を差し出す。


「まぁ良いさ。それよりちょうど良いよ、兄さん、あんたこの子に宝石をやってくんないかい?割と腹持ちする種族だけどさ、もう三日食べてないから流石にまずいよ」

「燃費効率が良いのか悪いのかよく分からんの、御主は……」


受け取った皮袋をじゃらじゃら鳴らして取り出すは小粒のルビー。

正直これだけで一体幾らになるか考えたくない物だが、取り敢えずそれに決める。


「…………そう言やさ」


と、竜胆に食わせる手前、エーリカはふと思ったのか口を開く。


「兄さん、あんたその宝石に符呪して食わせちゃどうだい?」

「符呪?」

「おう。そいつぁあたしが符呪の媒介に使う宝石なんだが……ああ、簡単に魔力通しゃあんたの属性が宿るんだ」

「そうする意味を聞いても良いかね?」


と、ゲンゾーが疑問を口にするとエーリカは首をすくめる。


「大した意味は無いさ。もしかすると竜胆に兄さんの属性が宿るかもって思ってさ」

「もしかすると?」

「あくまで可能性の話だよ。そもそも幻獣を一から育てる例っつーのがあんまり無くてね。おまけに魔力媒介になる物がメシだ、ちょっと面白そうだろ?」

「ふむ」


言われてみれば興味深い。

この竜胆には未だ属性らしい属性が無いらしい。

つまり食べ物から属性を統一すればもしかしたらもしかするかも知れない。

若干の興味を抱いたゲンゾーは宝石を握って念じる。


『喝』


僅かに魔力を注ぎ、手の平を開くと、


「…………」

「…………透明になっちまったね」


ルビーが色を失っていた。

綺麗は綺麗だが、宝石としての価値大幅ダウンである。

大丈夫だろうかとやや悩む内、


「あっ!」


竜胆がぱくりと一口に食べてしまった。


「こ、これ竜胆!ぺっしなさい!ぺっ!」


心配になって必死に言うが竜胆はきょとんとゲンゾーを見遣り、ぺふと手の平に肉球を置く。


「もっとって言ってるわ」

「何!?儂の心配をよそにお代わり催促とな!?竜胆や!腹が痛くは無いか!?儂の宝石は本当に大丈夫なのか!?」

「…………大丈夫くさいねぇ。魔力が害なすならすぐ反応起こすだろうしな」


と、エーリカの検分に少し安堵し、ならばと少し大きめの宝石を取り出す。

サファイアだ。


「よ、良し!ならば儂奮発するぞ!『喝!』」


今度もまた無色透明になる。

先ほどより一回り大きなサファイアだった宝石を竜胆はそのままペロリと平らげ、満足したのかぴぃぴぃと鳴いてゲンゾーの肩に乗って頬に頭を寄せる。


「おう、満足したかね?良し良し、いやはや少し肝を冷やしたが何ともふぬぅ……」

「はぁ!?」

「ゲンゾー!?」


そしてぱたりと倒れた。

勿論原因は一つ。


「あんたどんだけ魔力量ポンコツなのさ!?」

「わ、儂もう駄目だの……」


そも魔力量が全くと言って良いほど無いゲンゾーが魔力量を奮発してこのざまである。

エーリカに脇から抱えられ、エレンは額を抑えてからずびしとゲンゾーに指を立てる。


「決めた!あんたに魔力量増やす特訓したげるわ!言っとくけど拒否権は無いわよ!魔導使うたびパタパタ倒れられたら堪らないわ!」

「……はい」


そうとしか言えなかった。

かくして魔法使い直々の魔導特訓もまた始まったのだった。

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