永遠の仇とじいちゃん
「!?」
轟音が響き渡り、地が揺れた。
何かと思いながらその方向に駆け出すゲンゾー。
そこには、
「母上!」
カエデが只ならぬ気配で何者かと対峙していた。
それが敵かと察し、
「っ!」
途中で止まる。
カエデと対峙するは長身の筋骨逞しい軽装の鎧を着た男。
しかして銀髪を揺らすその頭には角が有り、人の白眼に当る部分が深い黒だ。
只ならぬ気配に本能的に構えるが冷や汗が噴き出す。
(強い…!今迄の雑兵に比べれぬ程の達者か!)
だらりと垂らした腕は明らかに無形の構え。
そして男はちらりとゲンゾーを見るとまたカエデに目を戻した。
返すカエデは今迄見たことが無い程の憎悪を双眸に宿し、男を睨んでいる。
「デビオス、貴方はいつから私の生活を壊せる程偉くなったのかしら?」
底冷えするような声にデビオスと呼ばれた男は動じず、つまらない物を見るかの如くカエデを見返す。
そして一瞬ゲンゾーを見遣り、殺気をぶつける。
「っ!」
凄まじい気当たりに、しかして瞳を閉じず睨み返すゲンゾー。
(舐めるなよ童!伊達に80余年は生きておらん!)
その返しにやや意外そうに眉をひそめるデビオス。
しかしその気当たりは単にゲンゾーを退けるための物では無かった。
「っ!?ゲンゾー!?」
「!」
(くっ、愚劣!)
自らを呪うが遅い、ゲンゾーに気付いたカエデははっとしてゲンゾーを見つめ、デビオスはその一瞬を突く。
「!」
刹那の光景、確かにゲンゾーは見た。
デビオスは爆ぜる様にカエデに迫り、貫手を放つ。
「くっ!」
カエデは寸での所でそれを結界のような物で捌き、
「!?」
デビオスはそのままゲンゾーに向かって駆けて来た。
(狙いは儂!母上の動揺を!?)
自身が不甲斐ないせいで逆に窮地を作ってしまった。
そう感じながら決心する。
(だが儂の命、只ではくれてやらぬ!)
せめて一撃を、と構え、
「駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
瞬間、影が遮った。