異世界の女神様
「君はいったい何者なんだい?」
拓夢はクレープに夢中のひめに向かって問いかける。
「そーじゃのー、いろいろ呼ばれ方はあるが、お主らに分かりやすく言うと、女神みたいな者なのじゃ」
さも当たり前の事のようにひめは答える。
「「女神…」」
拓夢達は、ひめの言葉を繰り返す、
「ただし、この世界の神ではないがの、…あむっ !!!」
クレープを食べ驚いている彼女のしぐさは、どう見ても5歳くらいの女の子にしか見えない…しかし今のところ彼女の話し以外の情報源が無い為否定しきれない。
「はい!その世界に魔法はありますか?」
結構な勢いで花は、手を上げて質問をおこなう。
拓夢と陸にラノベを強要するほどそういう系統の物語が好きなのである。
「うむ、綿密には違うが魔法に似たものは、あるのじゃ」
そう言ってひめは、陸のメロンクリームソーダを指差す。
「よーく見ておくのじゃ」
みんなの視線がメロンクリームソーダに集まる。
すると、すぐに変化が起こりだすメロンクリームソーダのソーダの部分の水面が盛り上がっていき、宇宙ステーションとの中継映像でしか見あたことの無いような、水で出来た球体が姿を現す。
緑色のメロンソーダで出来た球体は、空中で停止する、そしてゆっくりと動き出し、ひめの口に向かっていく…
「パクっ…おーパチパチするのじゃ」
常識を無視したような動きをするメロンクリームソーダ…固まる3人にメロンソーダ を楽しむ幼女
不思議空間が広がっている…
「女神ゆえ色々手順などをすっ飛ばしておるが、これくらいの事は皆が出来ることなのじゃ」
さも当たり前、常識ですよと言った感じで花に伝える。
「な…ナルほど~…」
憧れの魔法も現実で体験すると、花ですらなかなか言葉に出来ないようだ…
また、静かになってしまいそうな空気を陸が止める。
「でっ もろもろ信じるとして、異世界の女神様は何で地球で迷子になってるんだ?」
「迷子ではないのじゃ、しっかりと理由があってこの世界に来ておるのじゃ」
「理由?…話していただけますか?たまより…さん」
女神発言等で何故か敬語になってしまった拓夢が聞く。
「そうかしこまらんでよい、先ほどのように ひめちゃんと可愛く呼んで欲しいのじゃ」
拓夢にそう伝えた後、ここに来た理由を話し始める。
「まず事の始まりは10日前、うちの世界で異変が起こる兆しがあったからなのじゃ、現に魔物がの数がかなりゆっくりではあるが増えてきておるのじゃ」
「へー、魔物もいるのな」
「はい! 魔物は仲間にできますか?」
また花が手を上げて質問をする
「長く生き知性を宿した奴なれば出来ぬことも無かろうが、まあほぼ無理じゃろうな…」
「それで何故地球へ?」
拓夢は、脱線しかけた話しを正しい流れに戻す。
「そうだったのじゃ、オッホン、ここに来た理由は魔物増加に備えて良き人材を確保するのが目的なのじゃ」
「わざわざ別世界にか?その世界の奴らでいいんじゃねーの?」
「確かその通りなのじゃが、異変の兆しの規模が大きくての…その世界の人種だけでは対処できるか分からぬ故、保険が欲しいのじゃ…」
「でも何で私達の世界に?」
「この世界、つまり地球の人達は異世界に移る時に地球の神より加護が貰えるのじゃ、だからうちの世界の人よりも、加護を貰い身体能力が上がる地球の人を喚ぶことを選んだのじゃ、地球の神は位が高いから加護も凄いしの」
「転移チート♪ キタ━(゜∀゜)━!」
テンションが上がり小さくガッツポーズする花、続けて質問をする。
「じゃ~私達もひめちゃんの世界に行ける資格があるってことですか?」
ひめは、その質問を聞き少し難しい顔をする
「そうとも言えるが…駄目なのじゃ」
「何か問題でも?」
拓夢の問いにゆっくりと答えだす。
「異世界に連れていくにあたってうちなりに決め事を作った…1つ、地球の者であること、これは先ほど説明した通りなのじゃ、」
「あ~ 、地球の神の加護がなんちゃらの奴な」
解っているのかいないのか陸はメロンクリームソーダを食べながら話しを聞いている。
「そして、2つ目はうちの姿を見ることが出来る者なのじゃ」
「はい!私見えてます」
まだ条件に入ってますと手を上げて主張する花 、また話しがそれる前に理由を聞く拓夢
「それは、何故ですか?」
「うむ、うちを見ることが出来るということはそれだけで氣の総量が多いことに繋がるのじゃ、約100万人に1人いるかいないかの希少な存在なのじゃ」
「氣とは何ですか?」
「そーじゃのう…お主らに解り易く言えば えむぴー と呼ばれてる物かの?」
「MP…マジックポイント?やったー♪、私達もしかして魔法使える?」
また小さなガッツポーズをして期待しながらひめの顔を見つめる。
「うちの世界に来たら使えるのじゃ」
「行きます!!行かせて下さい」
テンション上がり食い気味に答える花、それを止めるように拓夢言う、
「落ち着いて…花、全部話しを聞いてから、たまよ…ひめちゃん続きを」
「うむ、この時点ではお主らは条件に当てはまっておる、当てはまらんのは3つ目の条件なのじゃ…」
「3つ目の条件って?」
花が待ちきれぬとばかりに答えを急かす。
ひめは少し言いづらそうに答える。
「 戦い慣れをしているかどうか なのじゃ…言いにくい話し、魔物との戦闘は絶対にしてもらわねばならんのじゃ…よって戦いに慣れている者、戦いに順応出来る者が必要条件に入るんじゃ 、つまりお主らのように優しく 戦いとは無関係のような者は、連れていきにくいのじゃ」
「「戦いなれかー…」」
拓夢と花は、ひめの言った条件にぴったりと当てはまる人物に心当たりがありその人物に目を向ける…。
その等の本人は、軽く笑いながらメロンクリームソーダを食べていた。