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君がくれた「音」

作者: 赤野 海
掲載日:2015/12/21

初めまして赤野 海と申します。

初めての投稿となります。

メモ書きを小説にしてみたものですので、短いです。


僕は人間に造られたアンドロイドだ。

全てが完璧に造られている。

だが、声だけは出せなかった。

別に、プログラムに問題があるのではない。

僕が仕えている主は、耳が聞こえないのだ。

だから声を発する必要がない。

出そうと思えば出せるはずだが、試したことはない。

話せる相手が存在しないからだ。

僕は声を必要としないまま、ずっと主に仕えていた。


しかし…

僕が仕えていた主は、病気で死んでしまった。

主は死ぬ直前に「お前はもう自由だ、幸せになれ…」と僕に手話で伝えた。

僕はその言葉を理解できなかった。

アンドロイドには心などない。

幸せとは一体何なのだ…


主が死んでからしばらく経った。

主には家族や親戚がおらず、僕の引き取り手がいなかった。

今の時代、アンドロイドは普及しすぎで余っている。

本来ならば、引き取り手がないアンドロイドはリサイクル工場へと送られる。

だが、僕は違った。

主が残した最後の言葉ーーー僕にとっては最後の命令

これを果たさない限り、僕は壊されるわけにはいかなかった。

けれど、感情を持たぬアンドロイドにとって、この命令は不可能に近かった。

何も進歩がないまま、僕は途方に暮れていた。


そんなある日、僕は一人の少女に声をかけられた。

その少女は、僕の名前を聞いてきた。

僕は困ってしまった。

本来ならば主となる人物が名前を決めるのだが、ぼくの主は名前をくれなかった。

だから今の僕は「名無し」である。

名前ではないが、僕を呼ぶとするならば製造番号ぐらいだ。

 

僕は左腕に刻まれている製造番号を見せた。

少女は少し困ったように微笑み、製造本号をそっと撫でた。

そして彼女は僕のことを「ロイ」と呼んだ。

 

僕は最初「ロイ」という言葉があるのかと思った。

しかし少女は僕に向かって「ロイ」と言い続ける。

僕はようやく少女が僕に名前とくれたのだと気が付く。

そして、今まで感じたことがないくらい胸のあたりが温かくなった。


アンドロイドには心がない。

けれど僕は今確かに「幸せだ」と感じている。

僕は初めて声を出して自分の名前を呼んだ。


「ロイ」


これは君がくれた「音」

僕が生まれて初めて貰った「音」だ。

僕はこの「音」を胸の中で響かせ、今日も君に会いに行く。


読んでくださった方々ありがとうございました。

これからもよろしくお願いいたします。

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