森を抜けて
翌朝。
目を覚ましたアルフレド達は次の町を目指して、森の中を突き進んでいた。
森を抜けた先にある町の事はフェンが知っているらしく、歩みに迷いがない。日が真上に来る頃には、森の終わりが見えていた。
「わあ! やっと、抜けましたね!」
シャルロットが空を見上げながら言う。
これまで木で空が満足に見れなかった事もあってか、広くなった空は少し眩しく、アルフレドの目に映る。
フェンも目を細めて眩しそうにしている。
「ここまで来れば、もう町が見えてくるはずだぜェ」
フェンが遠くを見ながら、真っ直ぐに指を差す。
目を凝らせば、何やら壁のようなものが遠くに見える。
あれくらいなら、日が高いうちに町に着くことが出来そうだ。
「……ところで、どうやって町に入るつもりですか?」
町に向けて、歩こうという時にシャルロットが声をかける。
質問の意味が分からず、アルフレドは首を傾げる。
フェンは何かを察したかの様に、溜め息を吐く。
「確かに、このままじゃ入れねェなァ。疲れるし、あんまやりたくはねェんだが」
そう言うと、狼男の体からパキパキと音がなり出す。
何が始まるのか、アルフレドとシャルロットはフェンに注目する。
体毛が抜けて、肌色の肌が見える。尖った口は徐々に人の形に近づいていく。
だんだんと人の姿に近づいていく中で、耳と尻尾は変わらず、狼のまま。
目の前で段々と姿が変わっていく狼男を二人は驚きながら見つめる。
「……久しぶりだが、どうだァ?」
そこには上半身半裸の男性が立っていた。
目は狼男の頃と同じく、鋭い金の目をしている。
「お前、変身出来たのか?」
アルフレドが目を丸くしながら尋ねる。
「まァ、亜人だしなァ」
フェンがなんでもないかの様に答える。
亜人というのは人間の姿に近づくことも出来るのか。
アルフレドは亜人の生態に感心する。その横でシャルロットが顔を赤くしながら、目を自分の手で覆っている。
「あ、あの、フェンさん。ふ、服着てください!」
「あァ? ああ、つっても、服なんてねェしなァ」
「……あー、これ着ろよ」
そう言って、アルフレドは自分の羽織っていたマントをフェンに手渡す。
フェンがマントを羽織ると、そこでシャルロットが目を覆っていた手を外す。
マントを羽織ることで尻尾を隠すことには成功したが。
「耳はどうする?」
耳は隠れていない。
このまま町に入ろうものなら、ちょっとした騒ぎになるだろう。
フードを被っても、フードを被った怪しい男では入れそうもない。
恐らくボディチェックをされて、狼男だとバレるだろう。
仮に入れたとしても、しばらくは警戒をされ、町民の監視もあるだろう。
「あ」
3人で悩んでいると、シャルロットが何かを思いついたような声を上げる。
「アルさん、包帯持ってますか?」
「ああ、持ってるけど……どうするんだ?」
「こうするんですよ」
アルフレドから包帯を受け取ったシャルロットはフェンに近づいていく。
「オ、オイ! 何するつもりだァ!」
包帯を持ちながら近づいてくるシャルロットを恐れ、フェンが後ずさる。
徐々に追い詰められていき、最後はアルフレドがフェンを羽交い締めにする。
シャルロットは身動きできないフェンの頭に包帯をぐるぐると巻いていく。
「出来ました!」
満足気に頷くシャルロット。
その横には頭を包帯でぐるぐる巻にされたフェンの姿があった。
何はともあれ。
3人は町へ向けて歩き出した。