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旅は道連れ



「ん、んぁ……」


シャルロットがもぞもぞと動きながら、ゆっくりと目を開ける。

ぼんやりとした表情でアルフレドを見る。

だんだんと目が潤んでいき。


「アルざぁあああん!」


「うお!」


泣きながら、アルフレドに抱きつく。

わんわん泣きながら、痛いところはないか、調子はどうだとアルフレドに聞く。

アルフレドとしては、抱きつく前に聞いてもらいたかったが。

アルフレドは大丈夫だとアピールをしながら答える。


「心配したんですよ! 剣折れてますし、吹っ飛んでますし、血も吐いてましたし!」


「それは、まあ。しょうがないだろ」


泣きながらの訴えに、アルフレドは困ったように笑う。

会って半日。

その半日で、ここまで心配出来るのもある意味すごい。

アルフレドはそう思いながら、あやす様にシャルロットの頭を撫でる。


「けど、心配してくれてありがとな」


「え、えう……どう、いたし、まして」


シャルロットが俯いて、もじもじしながら言う。

なんか、これは変な気分になりそうだな。

アルフレドはそう思いながらも、撫でる手を止めない。

すると、そこへ。


「あーあー、お熱いこってェ」


狼男が遮る様に言う。

その言葉にシャルロットの肩がビクッと上がり、アルフレドから急いで離れる。


「ぶ、無事なら良いんです! ところで、あちらの方は……」


シャルロットが涙を拭いながら、声の聞こえた方を振り返る。

そこにはのんきに片手を挙げている狼男の姿。


「お、おお、おおお……むがっ」


「おっと、まあ、色々事情があるんだ。それを聞いてから騒いでくれ」


アルフレドはシャルロットが叫び声を上げる前に、シャルロットの口を塞ぐ。

叫び声を上げられて、魔物が寄ってくるかもしれないからだ。

アルフレドは狼男をなんとか無力化したこと、敵対の意思はないことをシャルロットに話す。

初め、シャルロットは半信半疑だったが、のんきな様子の狼男とまだ生きている自分たちに納得して、狼男と向き直る。


「えっと、それでは、初めまして。シャルロットです」


「ん? おお、よろしくなァ」


「ああ、そういや、自己紹介してなかったな。俺はアルフレドだ。呼びやすい様に呼んでくれ」


「オレはフェンだ。まァ、よろしく頼むわ」


そう言って、 フェンとアルフレド、シャルロットはそれぞれ握手を交わす。


「……あァ、決めたわ」


「「ん?」」


フェンが呟く様に言う。

その言葉にアルフレドとシャルロットがフェンに注目する。


「アルフレド」


「お、おう」


名前を呼ばれたので、少し居住まいを正す。

フェンから次の言葉が出てくるのを待つ。


「オレ、オメェについてくわ」


「おう……は?」


今、何て言った?

アルフレドは我が耳を疑い、フェンの方を見る。

シャルロットも目を丸くして、固まっている。


「……フェンさん。も、もう一度言ってください」


先に回復したシャルロットがフェンにもう一回言うように言う。


「あァ? だから、アルフレドについてくって言ってんだろォ」


聞き間違いじゃなかったな。

アルフレドは聞き間違いを期待したが、どうも聞き間違いではないらしい。

隣を見やれば、シャルロットが鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。

そりゃ、そうだ。

ついさっきまで、命の取り合いをしていたのに、今は仲間になりたいと言う。

正直、正気かと言いたくなる。というか、言ってしまおうか。

アルフレドが考え事をしていると、裾を引っ張られる。その方向に視線を向ければ、シャルロットが困った様な顔をして見上げてきている。

俺の方もどうしようだっての。

シャルロットの視線にアルフレドも困った様な顔をして返す。


「……ダメかァ?」


気落ちした様な雰囲気でフェンが尋ねてくる。

心なしか、狼耳が垂れている様に見える。


「まあ、旅は道連れって言うしな。よろしく頼む」


「オウ! よろしくなァ」


アルフレドとフェンが固く握手する。

それから、フェンと魔物達が何やら話し合っていた。

その中で、家庭がどうたらと聞こえた様な気がしたのはきっと気のせいだろう。

狼の魔物は遠吠えを上げると、森の奥へと消えていった。

フェンが泣いているのを察するに、何か感動的な別れだったのだろう。

だが、アルフレドからはガウガウ言っているようにしか聞こえなかった。

シャルロットの方を盗み見れば、何故か涙ぐんでいた。

理解できない俺がおかしいのだろうか。

そう疑問に思いながら、夜は更けていった。






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