出会い
「……は?」
青年はとりあえず自分の身に何が起こっているのかを確認する。
自分のマントを毛布がわりに寝ている美少女がいる。終わり。
青年は何が起こっているかは分からないが、状況を整理する。
故郷の町を出て、旅を始めてから、早いもので3年が過ぎた。
次の町まで行くために、『フォレス大森林』を大きく迂回しなければならなかったのだが、まっすぐ突っ切れば、近道になると思い、森に入っていった。
それが間違いで、どれだけ歩いても森を抜ける気配は全くと言っていいほどなかった。
やむを得ず、青年は森の中で野宿をすることにして、森の中で一晩を明かした。
翌朝まで目が覚めなかったのだが、何かの感触を感じて目を覚ました。
そしたら、美少女がマントに包まっていた。まる。
いやいやいや、意味が分からない。
青年は頭を振ると、少女を観察する。
艶やかな銀色の長い髪に白い肌、まだ幼さの残る顔立ち。
着ているローブは素人目に見ても上質なものだと分かるが、所々に砂汚れが目立つ。
生きてるのか? 青年は疑問に思い、少女の首筋に手を伸ばす。
トクン、トクン、トクン。
脈はある。
そのことに青年は安堵の息を漏らすと、さらに少女の観察を続ける。
少女は緩みきった顔で、すうすうと規則正しい寝息を立てている。
「……ん、んう?」
不意に、少女が寝苦しそうに声を上げると、その双眸がゆっくりと開かれる。
雲一つない晴天の日の空を思わせるような、空色の瞳。そんな少女の瞳と青年の真紅の目が合う。
「お、おはよう」
なんとなく気まずくなって、青年から挨拶をする。
すると、少女はまだ開ききっていない目で青年の方をじーっと見つめてくると、ぺこりと頭を下げて
「おはようございます」
と挨拶を返してきた。
青年は呆れたようにため息を吐く。
「ところで、君はいつになったら、俺のマントから手を離してくれるのかな?」
「……へ? あ、すみません!」
少女が慌てて、マントから手を離す。
「それじゃ、俺はもう行くから」
少女にそう告げると、踵を返して歩き始める、はずだった。
くいっとマントを引かれるような感覚。
振り向いてみれば、少女が青年のマントの端を控えめにだが、しっかりと掴んでいた。
「お、おい」
「お、お願いします。私も連れてってください!」
少女が半ば叫ぶようにして、青年に告げる。
青年が少女の方を見やると、少女はまっすぐな空色の目で青年のことを見つめていた。
この目は折れそうもないな。
青年はやれやれと嘆息すると、手を差し出す。
少女は差し出された手と青年の顔を交互に見ながら、やがて、意味を理解したのか青年の手を握る。
青年は少女を立たせると、そのまま頭一つ分は低い少女と向き直る。
「俺はアルフレド。アルフレド・スミスだ。短い付き合いになるかもしれないが、よろしく」
「私はシャルロットです。こちらこそ、よろしくお願いします!」
お互いしっかりと握手をかわすと、お互い微笑み合う。
旅は道連れだ。
青年はそう思いながら、少女と森の中を進んでいった。