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一週間の成果






あれから3人は町の依頼掲示板にある依頼をひたすらこなした。

魔物の討伐に、農業の手伝い、野草探し……依頼掲示板にある仕事は一通りこなし、初めは袋に数枚の銀貨だったが、今ではそれなりにふくらんで銀貨だけでなく、気前のいい領主から働きを認められて、金貨を1枚貰った。


シャルロットは働くのが初めてと言っていたが、色々な仕事に精を出していた。時折、何かを珍しそうに見ていたり、感慨に耽っていることがあったが、懸命に働いていた。


フェンは狼男としての経験や知識、体力を発揮して、魔物の討伐や野草探しに取り組んでいた。実は一番の稼ぎ頭だったが、やる気のあるなしが多く、また町の中での仕事は一切手伝わなかった。


「あー、ニンゲンの旅っていうのも、楽じゃねェな」


町の外の壁に寄りかかりながら、フェンが呟く。その姿は狼男の時の姿のままで、マントを羽織り、フードを目深に被って顔を隠していた。


「でも、貴重な体験がたくさん出来ました!」


シャルロットが少し興奮したように言う。今は高そうな白いマントは脱いで、身軽な格好で壁に寄りかかっている。


「でも、ここに滞在するのも、あと一日なんですよね?」


「ああ。だいぶ貯ってきたからな」


アルフレドは持っていた硬貨袋を振るわせる。ジャラジャラと重たそうな音がして、この一週間での成果を感じさせる。


「なんだか、名残惜しいですね」


「そうかァ?」


寂しそうに呟くシャルロットにフェンが怪訝そうな目を向ける。


「そうですよ。この町の方は本当に良くしてくれましたし、それに……」


シャルロットが僅かに言い淀む。


「それに、フェンさんの、友達の故郷なんですよ。少しくらい名残惜しがったって良いじゃないですか」


「はッ」


シャルロットの言葉をフェンは鼻で笑う。

そんなフェンをシャルロットが見上げる。

何故笑うのか、とでも言いたげな視線にフェンは手を軽く振って答える。


「そんなおっかない顔して、睨むんじゃねェよ。前にも言っただろ。この町は生まれ故郷ではあるが、あンまり良い思い出はねェってよォ」


「……あ」


「とはいえ、もう追い出されてから、10年は経ってるからなァ。そんな昔の事はもうどうでも良くなっちまってンだわ」


「あ、あの!」


「もし、謝ろうとしてるんなら、そこまでだ。狼男として生きて、20年ぐらいが経つが、まさかそんな風に思ってくれるニンゲンがいるとは思わなかったからなァ。

……だからよォ、あンがとな」


シャルロットの頭に手を起きながら、フェンが微笑む。それは決して馬鹿にしたような笑いや、諦めの混じった笑いでもなく、優しい笑顔だった。


「……さて、まだ日も高いし、もう一稼ぎするか!」


事の成り行きを見守っていたアルフレドだったが、話がひと段落したのを確認してから、話を切り出す。

……若干、白い目で見られた気がするが、きっと気のせいだと思いたい。

アルフレドがそんな2人の視線を無視しながら、歩き出そうとすると。


「……くせえな」


「……? どうした?」


フェンが何かを警戒するように周囲を見渡す。アルフレドとシャルロットもそれに倣って、周囲を見回す。

何も変わらない、よな?

そう思いながら、フェンの方を見やれば、全く警戒を解く気配がない。


「どうにもイヤな臭いだ……この臭いは……間違いねェ、アイツだ」


ぶつぶつ呟きながら、フェンは鼻をヒクヒクと動かす。


「なあ、何が、」


そんなフェンにアルフレドが尋ねようとした時。


反対側から、何かが破壊されたような轟音が響く。


破壊された何かなんて一つしか思いつかず、それが。


それが最悪の想定で、だけど想定ですまないということも。


次から次へと聞こえてくる破砕音が、悲鳴が、咆哮が。


どうしようもない現実を伝えてくる。


「……冗談、ですよね?」


シャルロットが歯をカタカタ言わせながら、アルフレドとフェンを見上げる。


「冗談や嘘なんかじゃない。多分、現実だ」


多分なんて言葉を使ったのは、アルフレド自身認めたく無かったからだ。

まさか、町に何かが攻め込んで来ようとは、認めたく無かったからだ。


「あァ、紛れもなく現実だ」


フェンが遠くを見ながら、諦めたように呟く。


「…………なきゃ……」


シャルロットが杖を握りしめながら、街に向かって駆け出そうとする。

それに気付いたアルフレドがシャルロットの腕を掴んで止める。


「離して下さい! 早く、早く行かなくては、町のみなさんが!」


掴むアルフレドの手を振りほどこうとするが、びくともせず、シャルロットは更に暴れる。


「行って、どうするつもりだ?」


「助けられる人を助けます!」


「……自分から危険な場所に行くつもりか?」


「助けられる人がいるなら、助けに行きます」


「怖くて震えてるのにか?」


「……それでも、それでも! 目の前の助けられそうな人を見捨てたくありません! ここで見捨てたら、私はその事を一生悔いて、恐れると思います!」


シャルロットの気迫に、アルフレドの手が緩む。その隙を突いて、シャルロットはアルフレドの手から抜け出すと、町に向かって走り出す。


「馬鹿野郎っ……!」


アルフレドも腰から剣を抜くと、シャルロットの後を追って走り出す。


「あァ、最悪だ」


フェンはボソリと呟くと、先を行く2人の後を追いかけて駆け出した。






話が一つ抜けていたので、よく分からないことになってしまいました。

すみませんでした。

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