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故郷



「……あっさりと入れたな」


町に入る時に怪しまれるかとも思ったが、すんなりと入ることが出来た。


「そうですね。警備の方もさほど気にしている様子はありませんでしたし」


シャルロットが同意するように頷く。

何はともあれ、無用な混乱が避けれただけでも良しとしよう。

アルフレドは思い直して、町の中を見渡す。

なかなか、活気のある町だ。人もたくさんいるし、市場の品揃えも良さそうだ。


「まァ、問題がねェなら、いいだろォ」


「そうだな」


アルフレドは相槌を打つと、宿屋はどっちだと周囲を見渡す。

シャルロットもそれに倣って、辺りを見渡す。

そんな中で、フェンだけが何気ない調子で歩き出す


「お、おい! どこ行くんだ?」


「どこって、宿屋だろォ? さすがに町で野宿は怪しまれるからなァ」


そう答えると、フェンはスタスタと歩き始める。

歩いていくフェンの足取りは慣れたもので、迷いがない。

その姿にアルフレドは何かに気づく。

それはシャルロットも同じようで、小走りで走り出すと、フェンの隣を歩く。


「……ひょっとして、この町は」


「あァ、オレの産まれた町だ」


「やっぱり、そうでしたか」


フェンの故郷ということを聞いてか、シャルロットが納得したように頷く。

元々住んでいたのなら、知ってるはずだよな。

アルフレドも頷くと、フェンの隣に並んで歩き出す。


「それでは、お知り合いの方がいるかもしれませんね」


「……まァ、な」


シャルロットの問いに、フェンがぼんやりと答える。


「どうしたんですか?」


そんなフェンの様子を不思議に思ったシャルロットが覗き込むように尋ねる。

フェンは面倒臭そうに頭を振る。


「正直、この町に良い思い出がねェからなァ」


「……あっ」


フェンの答えにシャルロットがしまった、という表情をする。

そんなシャルロットの事を察してか、手を振りながら。


「……辛気臭い顔すんな。もう、昔の話だよ」


と答える。

そう答えたフェンの横顔は何処と無く寂しさを感じさせるものだった。

フェンに言われても、シャルロットは肩を落として俯いている。

アルフレドも何て声を掛けたらいいか分からず、無言でいる。


「おォ、あった、あった。ここだぜ」


歩くこと、十数分。

そこには宿屋の看板がぶら下げられた、木造3階だての建物。

立派な宿屋だと思いながら、見上げる。


「いらっしゃいませー。何名様のご宿泊ですか?」


入ると、宿屋の店主と思しき男性が声を掛けてくる。


「3人なんですが……どうする?」


「1部屋でいいだろォ?」


「だな。じゃあ、1部屋で」


1部屋で部屋を取り、部屋の鍵を受け取る。

シャルロットは今だに落ち込んでいるようで項垂れている。


「おーい、シャルロット?」


「は、はい!」


アルフレドがシャルロットの名前を呼ぶと、肩をビクッとさせてから顔を上げる。

アルフレドは一息吐くと、シャルロットに向き直る。


「いつまでも落ち込んでるなって。俺達会ってまだ3日も経ってないんだぞ?

お互い知らないこともたくさんあるんだから。間違えることだってあるだろ?」


「……はい」


「だから、知らないことがあるなら、これから知っていけばいいさ。な?」


アルフレドが諭すように言う。シャルロットは何度も頷く。


「……はい!」


返事を聞くと、アルフレドは満足そうに頷く。

そこで、アルフレドは鍵の番号を確認する。

207号室か。

アルフレドを先頭に部屋へと向かう。


「お、ここだ、ここだ」


鍵を開けて、部屋の戸を開ける。

宿屋の部屋らしく、清潔感がある。ベッドは2段ベッドが2つ置いてある。

窓際には安物と思われるローテーブルとソファ。あとはクローゼットと本棚。

風呂とトイレは共有らしく、部屋にはない。

うん、普通の部屋だな。

アルフレドは一人納得すると、荷物を部屋の隅に適当に置く。


「わーー!」


さっきまで落ち込んでいたシャルロットが目を輝かせながら、部屋を見る。


「アルさん、2段ベッドですよ!」


「そうだな」


「フェンさん、テーブルセットですよ!」


「そうだなァ」


「普通の部屋ですよ!」


「「そうだな(ァ)」」


何が嬉しいのだろうか。シャルロットがすごくはしゃいでいる。

フェンの方を見れば、何故か頬を緩ませて、シャルロットの方を見ている。

無愛想な振りをして、お前もそっち側だったのか。

アルフレドは肩を落とすと、手近にあったベッドに腰掛ける。

そんなアルフレドをシャルロットがジト目で睨む。


「なんだよ」


「……勝手にベッド決めましたね」


「ああ、ここが良かったのか?」


アルフレドはベッドから立ち上がると、シャルロットに譲る。

シャルロットはぶすっとしながら、2段ベッドの上に登る。


「私はここでいいです」


「ああ、まあいいけど」


何故か機嫌が悪くなったシャルロットに疑問を持ちつつ、アルフレドは再度ベッドに腰掛ける。

フェンも上の方が良いようで、アルフレドの上に陣取る。

全員が座ったのを確認すると、アルフレドが切り出す。


「さて、それじゃあ、これからのことを話そうか」




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