いつかの未来
とある城の中。その玉座に一人の青年が座している。
「我が王。準備が整いました」
人狼の青年が恭しく頭を下げながら、黒衣を身に纏った青年に声をかける。
「ああ、今行く」
黒の青年は仰々しく立ち上がると、バルコニーに向けて歩き始める。
黒の青年は自分に頭を下げる臣下達に視線を送る。
そこには様々な種族のヒトが立っていた。
人狼に半人半獣の妖狐、半人魚、竜人、黒と白の翼の生えた双子、皮膚が緑の厳つい身体の青年など、様々なヒトが、黒の青年が通るたびに、頭を下げる。
「さあ、皆、待っています」
バルコニーの前に立つ銀髪の少女がふわりと微笑みながら、黒の青年を迎える。
黒の青年はバルコニーに出ると、眼下に視線を落とす。
そこには他種族により構成され、様々な武器を持ったヒトや魔物が大勢集まっている。
黒の青年は腰から剣を抜く。
剣は黒く輝くと、その質量を増やし、身の丈程もある黒い大剣が現れる。
それと同時に、黒の青年の身体が黒の鎧に包まれる。
「……皆、聞いてくれ」
青年が低い声で呟くように言う。その一言に、聴衆は背筋を伸ばし、次の言葉を待つ。
「これから俺達は人間達と戦争をする。王国、帝国、公国、共和国、連合国、聖王国……俺達の前に立ち塞がる敵は数多だ。だが、」
黒の青年は手に持つ大剣を横に薙ぐ。
「俺達は万難を排し、俺達の自由を手に入れる。不自由も、不条理も、理不尽も!
俺達の世代で終わらせる! 俺達の自由の為に武器を取れ! 牙を剥け!
亜人も、魔物も、人間も! 全てが平等に生きられる世界を創る!
俺達の平和の礎の為に! 今! 共に戦おう!」
叫び、黒の大剣を天に掲げる。
それに合わせて、聴衆が武器を、爪を、牙を掲げて吠える。
その咆哮は木々を揺らし、空気を震わせ、地を鳴らす。
これは、一人の青年が旅をし、魔王となるまでの物語である。