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夜空の下で帰り日々  作者: 玄米最中
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誰にでも優しい彼は

「おはよ、ゆうた!昨日はごめんね!」

「あ、あぁ。大丈夫だよ」

「でも!付き合ってなくてもお似合いだよね!」


彼氏報告をしてきた友達から謝罪された。さほど気にしてはなかったんだけどな。でも谷山が「本性が出てた」って言ってたし。私、そこまで猫を被ってるつもりないんだけど。まあ、2年の付き合いだから…って言ってもそのうちの1年は、仲がいいわけじゃなかったけど。…待って。付き合ってないのにお似合いってなんだ?


「やっぱり一緒に帰るんだね。ゆうたと谷山くん」

「暗い道だからね、高校のロードは。私が暗いところ苦手なの知ってるから」

「えー優しい!私の彼氏もそれくらい優しいといいなー」

「優しそうだったじゃん」


うん、谷山はいつも優しい。奢ってくれるし、あんな風に待っててくれる。でも、それは私だけにしてることではない。きっとクラスの女子にだって男子にだってしてる。中学の頃から何も変わらない。悪く言えば八方美人だよね。


「ゆうたー!呼んでるよ!」

「あ、うん!今行く!」


私を呼ぶなんて珍しい。桜子か立花ぐらいしかいないけど。あ、谷山もたまに来るかも。他には誰もこないな。友達が多いわけじゃないし。


「おはよ、のろ」

「…おはようございます」


検討違いだった。まず、私のことを「のろ」と呼ぶ時点で部活関係の人と分かる。「のろ」は部活内での私のあだ名だ。…古橋誠先輩だ。何回か出てきているこの夏、私に告白してきた先輩だ。同じ裏方で私が照明、先輩は音響をやっている。同学年で裏方をやれるのは私だけだし、先輩の代も古橋先輩ぐらいしかいない。


「昨日はちゃんと帰れた?」

「ご心配なく。友達が待っててくれたので」

「あ、そう。放課後、体育館ね。そろそろ掃除しないと汚くなるなら」

「わかりました。荷物置いたらすぐ行きます」


体育館の照明の掃除もミュージカル部のお仕事。しかも裏方の。今日も先輩と二人で作業か…。あんまり言いたくないけど、正直気まずい。先輩はそんなの気にしてないんだろうけど。でも、やっぱり。


「ゆうたの先輩?」

「あ、うん」

「イケメンじゃん!羨ましいー」


うーん。なるほど、あの顔はイケメンになるのか。私には全然わからないな。なんだかんだで一番、近くにいる先輩だから。しょうがないよね。だって先輩からみれば私は直々の後輩なんだもん。可愛がるし、一緒にいる時間も長くなる。


「…ふぅ」


おかしいな、朝からなんとなくどたばたしてる。謝られたり、お似合いだよねって言われたり。いつもはもっと静かで空気が澄んでいて。冬の空気は時々、荒れてしまうのかもしれない。


「おはよ、笹原」

「谷山」

「あ、これ言われてたマンガ」

「ありがとう。読んだら返す」


渡された紙袋を受け取る。微かに手が触れけど何も思わない。中学の時、谷山を好きになり失恋してから、私に恋愛感情は消えてしまったのかもしれない。昔は触れただけで喜んでいた気がするよ。というか、もう谷山のことは好きでもなんでもないんだ、きっと。


「じゃあまた」

「うん」


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