奢ってくれる彼は
「……で、ここがこうなるの。わかった?」
「うん!あー助かったよ、ゆうた」
「いや、お役に立てたなら良かったや」
結局、桜子に数学教えてたらずいぶん時間が経っちゃった。教室にいてもやることないから別にいいんだけどさ。
「あ、ジュース奢るよ!」
「いいよ、わざわざ。私の好きで教えたんだし」
「じゃあ俺にたかるなよ」
頭を軽く叩かれた。後ろを向くとそこにいたのは谷山。そうだった。桜子と谷山は同じクラスだった。すっかり忘れてたよ。
「おはよ、谷山」
「おはよう」
「それとこれとは話が別。谷山にはほぼ、永久的にたかるよ?」
「俺の財布事情を考えなさい!」
とか言いつつ、ちゃんと奢ってくれるからな。なんだかんだで谷山は優しい。昨日だってあんまん奢ってくれたし。私の嫌いなはちみつ味の飴ももらってくれたし。
「じゃあ、またね」
「うん!ありがとーゆうた」
隣のクラスだからすぐ帰れちゃう。帰ったら何人か友達…いつメンが話してた。比較的早く来る組だ。
「おはよ」
「あ、おはよ!」
「ゆうた、聞いてよ!彼氏できたの!」
「え、嘘!?おめでとう!」
あぁ、恋バナですか。私には縁のない話。この手の話題で私が真ん中で話すことはまずない。だって好きな人も気になる人もいないから。みんながキラキラしてるのをチラリ横目で話を聞く。羨ましいよ。でも中学生以来、恋なんてしてない。したくない。
「誰?同じクラス?」
「部活の子!」
「うわー部内恋愛だ!やるー!」
部内恋愛…。あーいつぞかの私もそうなる羽目になってたのかも。でも、断って後悔なんてしてないし。先輩と付き合うのは少し難しい。って違う、私の話はどうでもいい。
「何組?」
「珍しくゆうたが食いついてるね〜」
「え?そうかな?」
「確かに!そんなに私の彼氏、気になる?」
「ま、まあね!」
…そんなに興味を示して話を聞いてないのか。おっかしいな。でも、単純に「好きな人ができた」よりも気になるは、気になるよね。どんな人と付き合っているんだろう、とかさ。
「隣のクラスの子!あ!確か、ゆうたと中学が同じだった子と仲良いよ!」
「谷山?」
「そう、その子!」
谷山と仲が良いのって言われると立花しか思い浮かばないな。ま、それ以外にもあいつには友達いるよね。当たり前だけど。
「へー。じゃあ後で聞いてみようかな」
「今、聞きに行けばいいのに〜」
「な、なんで?」
「だって、ゆうたとその谷山くん?付き合ってるんでしょ?」