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夜空の下で帰り日々  作者: 玄米最中
27/28

好きと伝えたい彼女へ

いつもの帰り道は少し曇りがちで雲が水の中にあるように少し霞んでいる。オリオン座はもう南の空にいる。真夜中にはもう西側に帰るということは季節の流れを感じる。


「先輩方、大人っぽく見えた」

「同じ制服なのにな」


さっき奢ったシュークリームを頬張りながら笹原は話してくれる。口の端にクリームが付いている気づかずにまたパクリと食べる。


「そういや今日さ、古橋先輩が「男の子は俺なんかみたいなのだけじゃない」って言われた」

「…まあそうだろう」

「そうなんだ。まーそうだよね」


え、古橋先輩は一体なにを考えてそんなことを言ったのだろう。それって自分みたいな不純な動機じゃなくて純粋な子もいるってことだよな。


…先輩は俺が笹原を好きなこと、気づいているってことなのか?あ、いや自分が全くの純粋なって訳でもないが。先輩に比べたら…って俺、先輩と話したことないぞ。なんでそんなこと知ってるんだ?


あークソ!そんなことより早くあれを渡さないと。なんのために恥ずかしい思いをしたのかわからなくなってしまう。


「笹原、これ」

「ん?なにそれ」

「…ホワイトデーのお返し。3倍」


鞄から綺麗に包装された箱を取り出す。よかった、鞄の中でグチャってしたかと思った。


「なんか立派じゃん!開けていい?」

「うん」


笹原がゆっくりと箱を開けた。リボンを落としそうになりながら。箱の中身を見た時、笹原の顔は少し微笑んだ。


「…3倍だね、綺麗」


笹原にお菓子はいつも買ってる。毎度たかられるから。だからお菓子じゃないものをあげようと思った。


そこで思いついたのは髪飾りだった。少し長くなった笹原の髪の毛は、バレッタとかピンとかで少しまとめるとすごく可愛くなると思ったからだ。


寒色系の色の花が付いたバレッタ。立花と前の休みに買いに行ったもの。立花も選ぶのに協力してくれた。


女子だらけの店に入るのは心の底から恥ずかしかった。


「…気に入ってくれた?」

「すごく。つけていい?」


笹原がつけようとした手を握り、バレッタを取り髪の毛につけた。手が震えてうまくつけられたかわからない。


「…似合ってる」

「あ、ありがとう…」


なんだかドキドキしてきた。もう心臓がどっか飛び出して転げ落ちそうなくらい。笹原に鼓動が聞こえてるくらい耳元で鳴ってるぐらい音が激しい。


「あのさ…」

「なに?」


言えばいいんだ。もう雰囲気は出来上がったしあとは自分が勇気を出すだけなんだ。


「…俺さ、中学の時に笹原のことたくさん傷つけたじゃん」

「うん」

「ずっと心がスッキリしなかったんだ。お前と同じ高校って聞いた時、すごく嬉しかった。ギクシャクする前みたいに笑いあえるかもって」

「うん…」

「実際、楽しかった。でも、それだけじゃ俺は納得しなかったんだよ」


ゆっくりでいいから今まで思ってたことを伝えていくんだ。


「先輩から告白されたって聞いた時、すごい驚いた。だって1年前まで地味な女の子で、可愛げも全然なく」

「うるさい」

「そのあとは中川が告白するし、何があったのか疑問だった」

「モテ期かね?1回目の」


そのモテ期は俺だけのものにして欲しかった。俺が最初に告白すればよかったのに。自分の気持ちに気づかずに、自分の勇気を作れ出せなかったからこうなったのだ。


「俺はお前とどこか遊びに行ったり、できることなら手を繋いで帰り道を歩いたり、ハグをしたり、プレゼントをしたり」

「…」

「…うまく言えないけど」


最後だ。ここまで言ったんならもう最後の一言なんだ。


「笹原勇気のことが好きなんだ」


一呼吸付いて、


「付き合ってほしい」


自分の意思に反して笹原の肩に手を回していた。壊れないようにそっと自分に引き寄せ、ゆっくりと腕に力を込めた。


「前みたいにいきなり別れようなんていわない。もう誰からも逃げないし、誰にもお前を取られたくない」

「…うん」

「そばにいてほしいんだ」

「うん」

「…うんしか言ってないぞ。他に何か言ってくれ」

「私もうまく言えないんだよ」


笹原の顔を見ようとすると強引に肩にくっつけてきた。こんな些細な行動でさえも愛おしく感じてしまう。


「返事がほしい」


伝えた俺は何も恐くないからなんでも言えてしまう。可愛いも好きも。単純に開き直ってる状態なんだろう。でも言われた方は恥ずかしくて何も言えなくて。何も考えられない。


「……」

「何?ちゃんと言って」

「わ、私も好き…」


肩に熱を感じる。笹原の顔に熱を持っているんだとわかる。


一番聞きたかった言葉を聞いた瞬間、自分の腕の力が強くなった。もう離さないよう、しっかりと抱きしめた。


夜空の下、俺らの帰り道はいつにも増してキラキラしていた。

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