きっかけを作った彼は
「いやー今日はドタバタだったねー」
「…桜子が勝手にドタバタしてたんじゃないん?」
卒業する先輩方がやってきてから桜子はテンションマックスになってしまい、慌てて走るからあちこち痣だらけ。それでも大笑いしてて、他の先輩方もテンション高めで、私と古橋先輩は裏方卓からその様子をぼーっとみていた。相変わらず冷めた二人だと思う。そのうち飽きてCDをきいたり、照明のゼラ確認したりしてた。
そんなわけで部室裏の物置が少しだけ片付いた。埃まみれになってまたしても喉がカラカラだけど。
「にしても寒いねー。もう三月だよ?」
「日は伸びたじゃん。すぐ暖かくなるよ」
「てか、この廊下歩くのもあとちょっとじゃん!私たち2年になるんだし」
「あ、そっか。でも3月一杯はここの廊下じゃない?」
「クラス発表いつだった?」
「4月の初めの方」
卒業式が終わってだいたい3日4日で私たちの終了式が行われる。春休みが来るがすぐに大会があるのでちっとも休めない。それにある程度は課題出るし。
クラス発表の日は春の大会の会場下見で見れないし。下駄箱移動するためにちょっとは掃除しないとだし。クラス替えって正直めんどうに感じちゃう。でも、ワクワクもするけど。
今日は鍵当番の私のために桜子が付いてきてくれた。空はまだ結構明るめ。そりゃそうか。だってまだ6時過ぎだもんね。でもここの廊下は相変わらず暗く、なんだか静か。
「そういや、なんで今日遅れたの?」
「あ、うーん。なんていうか…ね?」
「またそうやってごまかす!白状しなさーい!」
「わ、わかったよ。そのうち話すから」
「あ!!また告白!?ゆうた、モテるなー」
「違うよー!」
いや、あってるけど。でも言えない。また先輩にバラされても嫌だし。あんまりそういうことは噂されたくないし、話題にも上がって欲しくない。面倒ごとを次の学年に回したくないし。
「あ、そうそう!この間のことごめん。古橋先輩に言っちゃって。なんかさ、ここ最近ゆうたが心ここに在らずって感じだったじゃん?それ、心配してて」
「古橋先輩が?」
「うん。だから何かあったか教えて欲しいって言われたの。だから言っちゃった。そしたら先輩すっごい真剣な顔して悩むんだもん。彼女からのラインを無視して」
そんなに私のことを考えてるとは思ってなかった。ただの直属の後輩で可愛くないし、毒舌だし、一時期は完全無視だったのに。すごく酷い態度とって先輩のこと傷つけたかもしれないのに。
「私のこと嫌な目で見てたのに」
「それはゆうたが異常に感じてただけなのかもよ?」
「そう…なのかね」
「ゆうたが先輩の告白断ったのってさ」
「ん?」
「本当は誰か好きだったんじゃない?」
「そんなこと」
そんなことあるわけない。中学生の時に谷山といろいろあってから、もう恋はしたくないって心から思ったんだ。あんなに傷ついたのは初めてだったから。無視されたりするより辛かった。
でも、明確がないまま断ったことは確かだ。それは申し訳ないと思っている。
「まーのろのことはわかんないやー」
私も自分のことがわからないよ。なんでこの高校に入ったのか、ミュージカル部に入ったのか、裏方を選んだのか…。
「…あ」
「ん?なに?」
「いや、なんでもない。ちょっと思い出しただけ」
私がミュージカル部に見に行こうと思ったのは、中学3年生の文化祭でキャストをやったから。あんまりセリフもなくてただ立ってるだけのつまらないと言えばつまらない役だった。
劇が終わったあと、あいつに「お疲れ様」って言われたんだ。
その時、また言ってほしいと思った私はミュージカル部に行ったんだった。
「さ、今日も谷山くんがまってるよ」
「立花はいらないけど」
「そんなこと言わないのー」
今日もきっと二人は待ってるんだ。




