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夜空の下で帰り日々  作者: 玄米最中
24/28

くすぐったさを感じた彼を

「これにて卒業式を閉式いたします」


パチパチという拍手。今日はホワイトデーかつ卒業式。毎年ホワイトデーに被るらしい。嫌がらせなのかそれとも幸運なのか。


「そろそろ照明消すかな…」


ミュージカル部はこういう式典の時、体育館の照明を担当する。音響は古橋先輩と放送委員の子たちがやってる。私は1人。なんだか寂しいけどこんな風に上から式典を見るのは楽しい。


「お、のろ。お疲れ様」

「お疲れ様です、先輩」

「ずいぶん慣れたな。最初はフェーダー触るのだってビクビクしてたのに」

「褒めても何も出ませんよ」

「…同級生に告白されたんだってね」

「なんで知ってるんですか!?」


どうやら桜子が話したらしい。あの野郎、余計なことをこいつに言いやがって。目の前でニヤニヤした顔をしながらこっちを見てる。その顔、殴ってやりたい。


「俺が告白してから、のろは俺のことを恐がってたから。もしかすると男の人が苦手だったのかもって。そしたら悪化させたかもしれないなって思ってたんだよ」

「まあ、そうですけど」

「ごめん。でも、俺みたいなのばっかりじゃない。本当にお前のことが好きなやつもいるんだ」

「その子とは別に」

「その子じゃない子の話だよ」


また放課後と言わんばかりに去って行ってしまった。中川くん以外にそんな子いないじゃん。他の誰の話をしてるのかな。


照明卓から下に降りた。ちょうどクラスの子と合流した。みんな泣きそうな目をしていた。先輩のことみんな好きなんだね。


ミュージカル部の卒業する先輩は2人。どっちも役者さんだったからそこまで関わることなかったけど、あの2人の演技を見なかったら私はきっとここにいない。


演目はある有名演出家の作品。4人劇でそのうち2人は卒業する先輩だった。最初は違う部活に入る気だった。中学でやってた剣道か、小学生までやってた水泳か。演劇は中学の文化祭でチョロっとやったから気になってただけ。


でも、あの2人の演技に心を奪われてしまった。


「あ、ゆうたー。今日、ホームルーム無視して速攻部室ってさ!」

「ありがとう、桜子」


こうやって素敵な仲間に会えたこと感謝しないとだ。


「お疲れ様」

「あ、ありがとう」


通りすがりの谷山にそんな言葉をかけられる。嬉しいようなくすぐったさ。


あれ…私前にもこんなことがあった。谷山に「お疲れ様」って言われて嬉しくてくすぐったくなった…。


「いつのことだったかな…」

「ゆうたー!早くー!」

「あ、ごめん」


大声でクラスの子に呼ばれた。とりあえず、リュックをとったら速攻だ。多分、速攻するのは先輩が部室に来るからだろう。どの大学に行ったか報告会だ。それまでの間にきったなーい部室を綺麗にしないと。


「今日はホームルームなし!このまま部活でも帰宅でもいいってさー」


ホームルーム委員が叫んでる。私は今教室ついたのに、お仕事早い。私も早くリュックを担いで4階まで上がらなきゃ。


ぽてぽてと階段を上がろうと3回まできたら、見たことある男の子がスマホをいじっていた。鼻筋が通ったみんなが言うイケメン。


「笹原さん」

「あ、中川くん。部活?」

「あのさ、すこし話できない?今じゃなくていいんだけど」

「今なら大丈夫だよ」

「なら屋上にいこう」


階段の途中で中川くんに会った。手に紙袋を持ってる。あ、ホワイトデーのお返し?ならここで渡してもいいのに。


「中川くんは先輩とお別れ会とかないの?」

「あるよ。俺ら、今日は校庭が後半だからしばらく暇なん」


だから今がいいみたいな顔してたのかな。私にはよくわからないんだけど。急いで部活ラインに遅れることを伝えた。


「寒いね、まだ」

「屋上は風が通るからな。笹原さん大丈夫?」


すこしでも日が当たるところに移動した。風がスカートで、ひらひらひらりと膝で遊んでる。空は少しだけ雲がある。屋上はいつもこんな感じだ。


「バレンタインありがとうね。美味しかった」

「そう言ってくれると嬉しい。結構手抜きしてたから」

「これ、お返し。谷山みたいに3倍には返せんかったけど」

「気にしないで?」


その時、急に風が強くなった。そのあと、中川くんが言った言葉はあまり聞こえずになってしまったが。

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