気づいてしまった彼女は
部活終わりの教室。立花には忘れ物をしたから先に帰っておいてくれ、と伝えていた。暗い廊下に暗い教室は、冬のせいもあって寒々しく感じる。
「笹原」
「あ、どうしたの谷山」
笹原が中川のことをフったのは本人からラインが来てた。この間言った通り「お友達から」と言われたそうだ。
「お前こそ」
「なんか、私の机に「待ってて」って手紙があったからさ。一応待ってみようかなと」
「ふーん。また告白か?」
「知らない」
手に持っていたのは、机の中にあったと思われる手紙だった。そんなの待たないで帰ればいいのに。
「俺、先帰るぞ」
「えー待っててよ。こんな暗い中じゃ1人で帰れない」
「じゃあもう帰ろうぜ」
「でもさ、もし私じゃなくて違う人に渡す予定だったら?その子、可哀想じゃん」
「…待つなら電気をつけておけ」
笹原が電気をつけようとしに行った時、
「あれ?笹原さん?」
「あ、確か…」
どうやら友達の彼氏だったらしく、彼氏さんが笹原と友達の机を間違えたらしい。笹原の友達とは無事に連絡が取れて彼氏さんは帰って行った。
「…あれ?」
「どうしたんだ?」
「友達のところにも手紙入ってる…」
「あ、本当だ」
「じゃあこれは…」
笹原が手にしてる手紙、それは俺が笹原にあてた手紙だ。なんという偶然なのか友達の彼氏さんと同じことをしたみたいだけど。
あんまり気づいてほしくなかったのになぜか気づいたらしい。こういう時だけ勘がいいというかタイミングがいいというか。
「俺と付き合ってる噂が流れた時、どう思った?」
「なに急に」
「いや、なんとなく」
「…嫌だった。噂にされることも嫌いなのに」
「そうか」
「もう帰ろう」
「中川のかともっと知ってたら付き合ってたのか?」
「わかんない。さっきからどうしたの?」
大切な話をしないといけないんだ。笹原がちゃんと受け取ってくれたんだから。
「そういえば中川くん、私のこと助けてくれたんだね」
「え?」
「あの時、サッカー部の奴らに絡まれた時。今日、思い出したの」
「…」
余計な時に余計なことを…。確かにあの時、笹原を助けて欲しいと中川に頼んだ。絡んでる奴らは俺と昔色々あったからって。
「私、全然気づいてなかった。すごい申し訳ないことをしちゃった」
「また今度お礼をすればいいだろ」
「でも…。私はそんなことも気づかないであの子のことをフっちゃった。なんだかすごく申し訳なくて」
「…だから?」
「だから…」
ここで「付き合うことにする」とかいいだしたら俺はここから飛び降りようかな…。あの時、頼まなければよかったと心の底から恨んでしまう。それと同時に自分に腹を立ててしまうだろう。笹原の名前の気持ちすら持てない自分に。
「だからね、あの」
やっと勇気を持てたのに。心の準備もできていたのに。あいつに負けたくないっていうライバル心も出てきたのに。取られたくないって独占欲もあるのに。
「なんていうか…その」
本当は今日、告白しようと思っていたのに。




