眼鏡は本体
眼鏡キャラには当たり前の事実である。たとえ主人公だとしても…。
…来夢です。これから王さまに会いに行きます。耳を隠す為にシーファさんが持ってきた赤い頭巾を被っているのですが、シーファさんはニヤニヤしてて気持ち悪いです。
「気持ち悪い。」
「体調が悪いのか?」
ウォルフさんが顔を覗きこんで来ました。
「いえ、シーファさんの顔が…。その、ちょっとね。」
「あぁ…。悪い。」
「二人して酷くない!!」
「「どこが」ですか?」
シーファさんは苦笑いを浮かべながら忠告してきました。
「……狼に喰われないようにね。」
「狼が外に居るんですか?」
「そんな奴を近付けるわけがないだろう。」
「…ソウデスネー。」
目が遠くにいっていますが、どうでもいいですね。
初めて外に出ましたが、驚きました。村ですら無いだと!! 整えられた道がひっそりとありますが、ほとんど森です。おかしいなぁ。窓から見た景色が無い。
「ツダ、こっちだ。」
「あ、はい!」
裏手の方だったみたいです。付いていくと樹が減っていき、道が開けました。
「耳…いっぱい。」
「獣人の国だからな。」
石畳の道を歩く人達は、みんな色んな耳をしています。尻尾が出てる人もいます。髪色や目は色々ありますが、全て黒い人はいません…。ここには居ないだけだといいな。
ウォルフさんに付いていきながら、街並みを見ていきます。この辺は住宅街なんですかね?お店が見当たらないです。外国情緒溢れる家並みだからか、空が広い。ん?あの尖った建物は?彼処が目的地ですかねー。
「にーちゃん!!」
男の子がウォルフさんにタックルをかましながら笑っています。
「いつになったら騎士さまになるの!?」
「…もう成ることは無い。」
「なんで?にーちゃん強いのに!!」
雲行きが怪しい…。男の子が泣きそうになってる。えっ、私はどうしたらいいんだろう。
「大人の事情だ。」
「っ!!にーちゃんのばかぁ!!」
泣きながら男の子は、走っていってしまった。
「いいんですか?ウォルフさん。」
「ああ、この前も同じことをした。」
「…大人の事情って訊いてもいいですか?」
「ただ、剣が握れなくなっただけだ。」
「そう、ですか。」
…話は此れで終わりみたいです。どうして握れなくなったのか訊きたいけど、これ以上は教えてくれなさそう。もやもやするなぁ。
騎士で剣が握れなくて、成ることは無い?あれっ、もしかすると今って無職?
「隊長!!」
犬耳の男の人が話かけたけれど…。
「…」
無視して行くウォルフさん。歩くのが速くなってついていくのが、きつい!
「隊長!?あー、ウォルフさん!!待って下さい!!」
「なんだ」
みんな、息切れすらしてない。マジでかー。そこまで体力が無い訳じゃないのに…。というより全速力だったんだけど、他の人は早歩きの範疇なのかー。マジかー。
「たっ……ウォルフさん。俺達待ってますから、戻って来てください。あんな事誰も気にしてませんから…。」
「戻ることはないし、あんな事では済ませられない。だから俺を待つな。今の隊長はあいつだろう。」
あんな事?分からない事ばかりだけど…ウォルフさんはみんなに望まれてるみたい。戻らない理由は剣が握れなくなったからかな。戻れない理由があんな事…なんだろうな。まぁ、臆測でしかないけど。
「自分の仕事をしっかりとこなせ。分かったな。」
「はいっ!!」
泣きながら敬礼している。それを満足気に見ているウォルフさんはどこか寂しそうに見えるし、嬉しそうでもある。隊長と慕いたくなる何かを感じた気がした。…気がしただけだよ。
街中を歩いていて分かったのは外国みたいだということと、文字が見当たらないこと。絵が描いてあり、それのお陰で何の店かが予想出来る。あっ、数字はあるみたいだ。同じ数え方だよね?多分同じはず…。
大きな壁が見える。住んでいる所を分けているのかなー。王さまがいるくらいだし、貴族がいてもおかしくないな。
門に近付いて行くと立っている兵士が気が付いた。
「ツダはここで待っていろ。」
「…わかりました。」
ウォルフさんが離れていき不安になった。眼鏡でも拭いて落ち着こう…。眼鏡を外して裾で拭く。視界の端に光るものが見えた。目で追って顔を上げる。そこにはさっきまで見ていた光景と違っていた。
「な に こ れ…。」
色んな光が飛び交っていて、大気の動きが見える。何色もの光が混ざりあっては散っていき、ずっと見ていたいような気もするが…。無理、吐きそう。軽く目眩がする。目を閉じるがチカチカしていて気持ち悪い。
「いきなり なんで?」
直前の動作を見直し気が付いた。もしかして…眼鏡?思い直せば風呂場でみた光りも、眼鏡を外していた。……とりあえず眼鏡かけるか。