あっちむいて、ほい!
第三高校の教室の真ん中でじゃんけんをしている男が二人。
「あっちむいて、ほい」
声を出すと同時に人差し指を上に向けた、すると面白いように上を向く茶髪の男。180CM後半もありそうなこの男があんぐりと口を開けたま上を向く様はとても滑稽に見える。
「また負けた、将あっちむいてほい強すぎだろ」
すると茶髪の男よりも10CMほど小さい黒髪の男が間髪をいれずに「剣次が弱いんだよ」と返す。剣次は将に背を向けて歩き出し「負けたから買ってくる」と言って教室から出ていった。入れ替わるようにして流れるような黒髪の女が将の前に立った。将よりもまた10CMほど小さかった。
「なんだよ、さとり」
「怪しい」さとりの鋭い視線が将に向けられる。
「なにがあやしいんだ」と将が一言。
「負けてるところ見たことない」
「あっちむいてほいは得意だからな」
「得意にも限度がある」
将の強さは異常だった。負けるときはじゃんけんで負けたときのみで、あっちむいてほいに持ち込んだ時の勝率は100%。これではズルをしてないと思われないほうが難しい。
「ズルはいけない」さとりはさらに鋭い視線を向けた。将は慌ただしく視線を動かし、そして視線を窓の外に向け「UFOだ」と叫んだ。するとさとりは窓の外を見てから「やられた」とつぶやいた。
全速力で教室から逃げ出す将の姿があった。
「さとり、またにげられたのか?」
後ろから声が聞こえてきた。
「剣次は買ってきたの?」
剣次は笑いながら「まだだ」と答えた。
「約束は守らないと駄目」さとりは剣次の目をじっと見つめて言った。
「法律は守らなくてもいいのか?」剣次は責めるような視線を向ける。
「守ってる」と言ってさとりは目を背けた。