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間逆   作者: 菅野いつき
第二章   そして、始まった
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六年生

なんか、若干文章がおかしいかもしれません。

ついに、私たちも最上級生となった。


この時も、私は相変わらずの毎日を送っていた。


あんな日々が続けば流石に人間性はなくなりかける。喜怒哀楽の喜と怒と哀は少しだがまだある。しかし楽はもう、ほとんどと言っていいほどなくなっていた。


だが、なんとなく笑うことだけはした。彼には心配かけたくないからきている行動だ。



光は、強くなっていた。私は強がりになっていた。


冷たい風が吹き荒れるある日の帰り道。


最上級生となり、私は、下校班の副班長となっていた。 理由は至って簡単で、まず、ほとんどの生徒が部活。それで、この下校班には最上級生は私を合わせて五人しかいない。 しかも、そのうち二人は送り迎えが多く、あと一人が部活動だ。それ故、私が副班長をしている。


ちなみに、班長は光だ。

私は思うこの下校班に班長と副班長は本当に必要なんだろうか。誰一人として班になって並ぶ者などいない。みんながみんな自分が思うように自由に行動している。


副班長である私でさえも班の一番後ろではなく、班の中間部分で、前を笑顔で歩く光をぼんやりと眺めていた。


これだけは言っておこう。別に光の事が気になるとかではない。ただ見るところがなかったから見つめていただけだ。


彼は笑顔で歩き続ける。そんな、彼の周りには男女年齢問わず沢山の人がいた。一年生の彼からは想像もできないことだ。沢山の笑顔に囲まれて光も楽しそうだ。漫画で表すなら、彼とその群がる人の後ろには花が咲いていることだろう。

私はため息を付く。羨ましいとか、憎たらしいとかそんな感情で溜め息をついたわけではない。ただ、なんとなくついた。


その時、左から誰かがぶつかってきた。油断しきっていた私はよろけて右半身から倒れる。その拍子に、運が悪かったらしく、右足を捻った。


小さな呻き声が私の喉から発せられた。と同時に男性と思われる笑い声。


私は、はっとした。今日歩いて帰っている六年生は、私と光の二人だけではない。いつもは送り迎えや、部活の生徒が珍しく今日は班にいるのだった。思い出してももう遅い。私が転んだことも気にもしない班員が、私の横をどんどん通りすぎて行く。

 

 それは、なんとも言えない悲しさだった。例えるなら、知らない町に一人とり残されたような感じだ。



班の最後尾が小さくなった時に私はやっと、ゆっくりと立ち上がる事ができた。


しかし、右足は想像以上に痛い。地面につけるとあまりの痛みによろけてしまう。けんけんをして前に進もうにもこの道は角度が強い上り坂ですぐに疲れてしまう。右足も少し揺れたくらいで痛みを発した。


 誰かに手を借りたいが、班はもう遠くに行ってしまった。自分の人付き合いの悪さを恨んだ。だが、どんなに願ってもどんなに恨んでも、もう遅い。私は再びけんけんを始めた。


 しかし、なかなか坂の上には行けない。やはり片足に慣れていない私には急に坂でのけんけんは無理に等しかったのだろう。やっと、坂を登りきった時には、もう日は傾き空はオレンジ色に染まっていた。


 まだ、家までは相当な距離があった。とても片足で一人で行けそうにない距離だ。私は途方に暮れた。足も疲れていた。


 仕方なく休むことにする。


 昔、みんなでかけっこのゴール地点にした大きな岩に登ってそこに腰掛ける。足は宙に浮いた。


 その浮いた足をぼーっと眺めた。それは、なんとも弱々しそうなものだった。こんな足だったら簡単に折れてしまうだろうなと思った。


「ーかる」っと声が聞こえた気がした。周りを見渡して見たけれど何も誰もいない。気のせいだったのだろうか?


 また、目線を下に下ろす。


 すると、また声がした。今度は気のせいではない。はっきりと「光」と声が聞こえたのだ。


 私は勢い良く顔を上げ、声のする方向を凝視する。その瞬間私の目の前がぼやけた。


 私の目線の先にいたのは、なんと光である。彼は私に気づくと、大きく手を降って駆け寄ってきた。


「探した。班の中に居ないからびっくりして、ここまで戻ってきた」


 彼は早口にそう言った。


「他のみんなは帰らせた。もう暗くなるから。どうしたの?」


 彼は心配そうに首をかしげた。


「…足、捻っちゃって」


 私は涙を堪えながら言った。光は少し考える仕草を見せてから私に言った。


「肩貸すから、捕まってゆっくり行こう。」


 それは優しい口調であった。


 私は岩から降りて、彼の肩に捕まり、ゆっくり片足立ちをする。そして、ゆっくり捻った方の足を着けてみる。


「いっ」


 あまりの痛さに声が出てしまう。仕方がない。両足は止めて片足でけんけんした。


 少し進むと片足にどっと疲れが出てくる。痛みが走る。そのたびに私は止まる。三百メートルぐらいを越えたぐらいの時に、それまで何も言わなかった光がゆっくり口を開いた。


「考えてたんだけど……おぶろうか?」


 私は反射的に光を見る。


「いやいやいや、いいよ。私重いし。」


「確かに重そうだ。」


「ひどっ」


 光はクスクス笑うと、私の前に立ち半ば無理矢理に私をおぶった。そして、歩き出す。


「いいよ。重たいでしょ!」


 光は無言だった。


「大丈夫だから」


 何も答えてくれなかった。このあと彼に何を言っても答えてはくれなかった。そのまま家まで送ってもらってしまった。当然両親は驚いていた。


 次の日。病院へ行った。色々検査をした。その検査結果は足首の下の骨ににひびが入っていたみたいだった。この足の怪我を治すのには、約一ヶ月かかったがそれは、まだ先の話し。


 病院に行ってから学校へ行くことになっていたので私は車で学校まで送ってもらった。病院で松葉杖をもらっていたので病院を出てから車までの移動が楽だ。


 車に乗って学校へ向かった。病院から学校まで一時間かかった。


 今教室に入ると四時間目の授業真っ最中でなんとなく気まずい。授業が終わってから入ることにしよう。そう思いたって、私は車を降りると、まだ慣れていない松葉杖を地面に付きながら保健室へ向かう。慣れないことをすると、いつもは気にならないものでも無性に気になって神経を使ってしまう。今日はいつも特に気にならない石にさえ気になった。地面がいつもの何億倍も怖いものに感じた。


 保健室に着き、保健室の先生に軽く事情を説明して居させてもらうことにする。


「大変だね。学校来るのも疲れるでしょ?」


 先生は優しい笑顔を浮かべ言った。


 私は静かに頷いた。


「後、二十分ちょいあるから、少しベッドで休みな。」


 小声で「ありがとうございます」と行ってベットまで移動して中に入る。


「それじゃ、ごゆっくり」


 最初は寝る気はなかったのだけれど、少し目を瞑るとすぐに夢の世界に落ちてった。


 その時どんな夢を見たのかは覚えていない。ただ、なんだか嬉しい気持ちと悲しい気持ちに同時になったのは覚えている。


やがて、四時間目も終わり、私はゆっくり松葉杖を動かして教室へとやって来た。


 教室のドアをゆっくりと開ける。みんなの視線が私に向く。しかし、私に声をかけるものなんて誰一人いなかった。いや、一人だけいた。光だ。


 光は私の前に来ると「大丈夫?今給食作ってやっから席座ってな」と早口で行って配膳台に並ぼうとした。私はそれを全力でそしする。光のしてくれた行為が嫌だった訳ではない。ただ皆にどう思われるかが怖かった。


「大丈夫だよ!そんくらい出来る!」


「無理しない方が身のためだぜ」


「いいよ。無理してないし」


 しかし、光は譲ってはくれなかった。それどころか、そう言い争っているうちに私の給食を作り終えていた。


「はい。終了」


 私の机に置かれた御盆、給食。なんだか悔しかった。


「無理は禁物」


 彼はそう言いながら自席へと帰っていった。


 席に座る。せっかく、作ってくれたのに温かさを感じず悔しさを感じてしまった私が嫌になった。



これが小学六年生の話

読んでくださりありがとうございました。


今後ともよろしくお願い致します。

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