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間逆   作者: 菅野いつき
第二章   そして、始まった
5/14

四年生後半(マラソン大会)

はい。ペースを遅くしております。



 これから、また忙しくなりますので、リズムよく掲載できたらいいな、と思っております

 季節は巡り十一月。


 木の葉が赤やオレンジ、黄色といった色に染まりきり、色の付いた落ち葉が校庭を染める時期。


 我が学校では、毎年恒例、校内持久走大会と呼ばれるいわば、マラソン大会が始まる季節になっていた。


 私は毎年、八十三人中、五位以内に入っている。勿論今年も入るべく練習をしていた。



 光は速くなっていた。そして、努力家だった。



 今日は日曜日。学校は当然休み。


 私達は、持久走大会に向けて練習をするために、午後三時に私の家に集まった。


 メンバーは私の兄翔輝、私、光、その他五人。このメンバーで走る。コースは毎年同じで坂道の多いいコース。確か、三キロメートルぐらいある。そこを無理はせず、自分のペースで走る。


 私と兄は、この中では一番目、二番目に速い。そして、私達はさらに速くなるために、足には三キログラム合計六キログラム、腕には二キログラム合計四キログラムの重りをつけて走っていた。


 


「んじゃ、集まったことだし、走るか。」


 この中では最年長の兄の言葉。みんなは返事をして、位置につく。


 練習にも関わらず不思議な緊張感が漂っている。私は耐えきれず生唾を一つ飲んだ、ら


 兄のスタートの合図で一斉に走り出す。私は軽快な足取りで走り出した。その足取りは、とても自信に道溢れて見えていたであろう。


 走り出して三十メートルもしないうちに最初の上り坂にやってくる。しかし、まだ、角度もきつくない小さな坂だ。このくらいはすぐに登りきれるそれは、私だけではなく、他の人も同じであろう。


 登りきればこの先、八百メートルは緩やかな上り坂である。その、緩やかさは、角度十度ぐらい。しかし、この緩やかな十度は足に重りをしている。私達兄妹をじわじわと苦しませる。まぁ、もう慣れたが。足のつき方を少し変えれば楽に走れる。これに気づいている人は何人いるのだろう。


 そして、八百メートルを越えれば、角度実に、六十度の急斜面が十メートル続く。ここに入ると、今までついてきていた人たちが一気に減っていく。今回は誰がついてくるのだろう?


 私はその急斜面に少し、先を走る兄と一緒に入る。ここは、私と翔輝の距離が広まるところでもある。

 

 今日は誰が後ろにいるのだろう。それは、ゴールすればわかることだが、あと半分はある。


 急に足と腕の重りが重くなったように感じた。疲れると、重りが重く感じるのは知っている。しかし、約二倍になったように感じるのはやはり、慣れない。


 坂を上がりきる。上がりきったら、右に曲がる。翔輝とは結構離れたみたいで前を走る人は誰もいない。


 ここからは、くねったカーブと、下り坂が約三百メートル続く。


 走るのは上りよりも、下りの方がきつい。足のつき方も、腕の振り方も一気に変わってしまう。下手すると足を痛める。


 私は下り坂に入った。やっと、下り終わると約百二十メートル平らな道が続き、次にまた、急な上り坂が百メートルある。


 平らな道を走っていた。息が荒い。あと約四分の一ぐらい。そのとき、後ろから足音と荒い息づかいが聴こえてきた。人が一人すぐ後ろにいる。あの大きな上り坂に負けず。ついてきた人物が。


 その人物は私の横を通りすぎ、物凄いスピードで、次に待ち受けている上り坂を上って行く。  


 私は目を見開いた。


 あり得ない。あり得ない。あいつが、いつも最下位のあいつが、私を抜かし二位になった。


 その人物はもう、おわかりの方もいると思うが紛れもない、光のことだ。


 めちゃくちゃなホームで坂を上って行く光私は、必死にその後ろ姿を追いかける。しかし、追い付くことはなくついには見失ってしまった。



 やがて、ゴールが見えてくる。大きな下り坂を下った先。私の家の後ろ側が見えてきた。


 家の横を通りすぎ、スタート地点ともなった道路のひび割れを越える。


「タイム……十二分……四十三…秒」


 兄の途切れ途切れの声が聴こえ庭を見る。そこには、庭の芝生に倒れこむ光と、こちらを向きながら時計を見つめる兄がいた。


「お前の……タイム。新記録…更新じゃないか?」


 兄は私に言って笑う。


 それを聞き、私は頷きながら光のもとへ歩み寄る。光はまだ、息が荒いらしく、空を見ながら息をしている。


「光は、すげーよ。俺のこと抜かそうと、真後ろにいたからな。」


 私はそれを聴いて驚く。あの、光がそんなに速くなって。


「どっちが…勝ったの?」


 荒くなった息は構わず聞いた。


「それは、俺だよ。最後に本気出したんだ。」


 それでも、凄い。私の兄に、本気を出させてしまうんだもん。


 気づいたら私は夢中で「凄い凄い」と叫んでいた。光は座るとまるで、自分のことのように喜ぶ私に、驚いている様子だ。仕切りに瞬きをしている。


 やがて、後を走っていた人達がゴールした。私はその人達にもこの事を話した。みんな驚いている。光は照れていた。



 この年の持久走大会。光は部活もやっていないのに百十三人中、九位を取った。

毎度読んでくださりありがとうございます。大変嬉しく思っております。

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