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ゴミ処理場の裏に 2

 自転車を引きながら走って丘を登る。飛び込むようにして丘の突端部分に転がり出ると、同時に手を離した自転車は鈍い音を立てて芝の上に倒れた。


 青い匂いがする。大の字に横たわりながらゴミ処理場から流れるゴォンゴォンというこもった音を聞いた。

この時間、ここにはいつも人がいない。ゴミ処理場という普段は避けて通るような場所の、わかりずらい脇道を通っていくのだからそれも頷けることだ。いつかここにも何かが建つのかな。


 部活を辞めたのは人間関係があまり上手くいかなかったせいだ。先輩、後輩とのやりとりは正直疲れる。休日も練習にかり出される。俺の足は自然とむさ苦しい体育館の2階から遠ざかっていった。


「高橋、お前最近来てないが部活辞めるのか?」

「辞めます」

「そうか、わかった」


 顧問も特に引きとめることなく、俺はあっという間に帰宅部になった。そもそも二年から入部したくせに主戦力でもない俺が辞めたところで部に支障はないと考えたのだろう。

部員たちも特に騒がなかった。騒いだのは坂井と、同じクラスで卓球部部員の矢野ぐらいだ。せっかく誘ってくれた矢野には悪いことをしたと思っている。


 大の字のままゆっくり目を開く。この空を初めて見た時は冗談抜きで感動した。最近の子供たちはこんなに広い空を知らないだろう。こんな天然のプラネタリウムを知らないだろう。


 空は藍色で雲は黒く、星は二つだけ見えた。遠くの町はまだ朱色の絵の具を黒と混ぜたような色をしている。雲はいつもより早く流れた。これを見て初めて俺は風を意識した。


 時折何かの花の甘い匂いがして、俺はそれを嗅ぎ落とさないように嗅いだ。

綺麗な空だ。本当に綺麗だ。ゴミ処理場の裏だなんて想像できない。ただわかるのはあの星の光が、俺が生まれるずっと前のものだっていうこと。

このまま眠ってしまいたい。

ここで眠ったら、きっと良い夢が見られる。


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