夢見る年齢
「よって、報告が遅くなったが俺フラれちったぜ」
「でも卒業したらまた告白するんだろ?」
「まあな」
「大丈夫だ。あれだけインパクトのある台詞を言ったんだ、工藤さんもしばらく忘れられないよ。彼氏も作らないだろうし」
「わかったって言ってくれたんだ」
「え?」
三井の声が急に大きくなる。
「わかったって言ってくれたんだよ~最後に! 俺凄ぇ嬉しくてさ、工藤さんが帰ってから工藤さんが座ってた椅子座っちゃったぜ!」
「待ってる」ならまだしも「わかった」だけでは正直なんともリアクションを取り辛いが三井が喜んでいるし、俺も嬉しくなってきた。でも工藤さんが国立大学に進学が決まったとして、三井と別々になってしまったら元も子もない。
「でも工藤さん国立行くんだろ? 仮に告白成功しても大学なんて出会いがたくさんあるだろうし、別々じゃ辛くないか?」
「だからさ、俺も工藤さんと同じ大学目指すわ」
三井の言葉には迷いが感じられなかった。成績的には平均より少し下程度、英語だけはそれなりに出来るレベルの三井が工藤さんと同じ大学を目指すだなんて現実的ではない。
まだあと1年あるとしても文系と理系の両方の能力が必要とされる国立大学だ、厳しい道になることは目に見えている。そもそも初めから国立を目指す人間とは覚悟において決定的な差がある。
「同じ大学って国立だろ? 今から勉強するのか? 今の成績じゃそれこそ死ぬ気でやらないと……」
「やるだけ、やるさ。こう見えて俺工藤さんのこと本気なんだぜ?」
「でも」
そう言いかけてやめた。俺は何だ? 高校2年のガキがなんで現実なんて見てるんだ? 十分夢見れる年齢じゃないか。初めから無理だって決めつけるなよ。
「わかった。俺応援するよ。お前なら絶対できる」
「なんだよ急に。まあ言われなくてももう合格するとこしか想像してないけどな」
三井の少し照れた様子が電話越しでもわかる。
「そういえばお前は居ないのかよ? 好きな奴」
好きな奴、か。
「まだ、わからない。いや、わかんなくなってきた」
「はあ? 何だよそれ」
「もしさ、三井の前にまあまあ可愛い子が現れたとして、その子に告白されたらどうする?」
「何の話?」
「いいから、それでも工藤さんを追いかける?」
「ははん、お前俺を試してるな」
三井は俺が工藤さんに対する気持ちの本気度を測っていると思ったらしい。
「そりゃ工藤さんを取るに決まってるだろ」
「まあまあ可愛いんだぞ? 性格も良い。工藤さんは綺麗だけどフラれる可能性だって大きい。それでも工藤さんを選ぶのか? 泣いちゃうぞその子」
三井は少し黙ってからふっと息を吐いた。
「俺がそんなにモテることはないと思うけど、泣かれたって仕方ない。仮にその子と付き合っても、その子の笑顔見たら俺多分辛いと思う。それなら1回泣かせて終わりにするほうを選ぶよ」
こいつと居ると楽しい理由がわかったような気がする。何も考えていないようで、しっかり自分の意見を持っている。その両極端な部分が隣にいると俺を揺さぶってきて、毎日新しい発見をさせてくれる。
とんでもない深さを持った奴だ、三井なら相手が工藤さんだって決して見劣りはしない。
「悪いな、長電話付き合せて」
「いや、俺も結果が気になってたから。それじゃしっかり勉強しろよ」
「おう、任せろ。ところでお前も国立目指さない?」
「俺はやめとく」




