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コーヒーの香り 3

 砂糖を2杯入れてからまたコーヒーを飲む。やっぱりこっちのほうが美味い。まだ舌はお子様なようだ。


「何それ」


 その一言だけ言うと立花は黙ってコーヒーに口を付けた。太陽からの斜光が立花の栗色の髪を照らす。空気に舞う小さい埃、滑らかな肌、反射する十字架、全てがまどろみの中に溶けていくようだ。


「でも」


 カチャリとカップとソーサーが音を立てる。


「ありがとう」


 コーヒーを堪能してから俺たちは席を立った。立花は俺の方のスプーンもまじまじと確認してにやけていた。レジでは俺が2人分の料金を払ったが、どうしてもと言うので店の外へ出た後レシートを見ながら立花と割り勘にし、さすがに端数は俺が取り持った。


 ショッピングモールは駅と一つに繋がっているので、そろそろ帰るという立花を駅まで見送った。


「あのさ」


 立花が少し言い辛そうに呟く。


「何?」

「教室でも、話しかけていい?」


 力無い笑顔に胸が締め付けられる。


「別にそういうの、許可とかいらねーよ。改まって言うことじゃないし」

「迷惑だったら嫌じゃん」


 自由奔放に見える立花だが本当は色んなことを考えているようだ。身の丈に合わない心を持ってしまって、それを持て余しているような感じ。


「嫌な奴と2人でコーヒー飲んだりしないだろ」


 自分で言いながらその通りだと思って失笑してしまった。立花もつられるようにして笑っていた。少しだけ立花の耳の周辺が赤い。勇気を出して言ったんだろうなと思うと無性に可愛くて仕方がなかった。


「それじゃあ学校で」

「うん、学校で」


 改札を抜けてから一度振り返って立花が手を振った。俺も軽く振りかえす。外見は勿論変化はないのだが、これまで見てきた立花の姿がよりくっきりとした輪郭を帯びて見えてきた。少しだけ霧が晴れたかな。


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