プロローグ
「チャーハン1!カレー1!ラーメン3入ります!」
「「「「ありがとうございます!」」」」
此処は、オフィス街の外れ居酒屋と軒を連ねるファミレスです。
今日は日曜日だと言うのに来客が多くて、目が回る忙しさとはこの事かと実感中。
何でも、数日前に都心を襲った雷雨で近くの主要送電線が焼き切れたとか‥
此処にくるサラリーマンの皆様が口々にこぼしてました。
「生5!餃子3!入ります!」
「「「「ありがとうございます!」」」」
私も今日はシフトじゃ無いのに学校帰りに電話が掛かり、店長に拝み倒されて臨時のバイトです。
大学のサークル仲間の荒井 慕 (あらい しの)ちゃん。
温和しくて真面目な彼女は私の押しでこのバイトを始めた訳で、その子が先日から音信不通になった事も忙しさの一因だと言われれば‥‥はい、断れません。
「ホッケ1!角煮1!一本漬け1入ります!」
「「「「ありがとうございます!」」」」
忙しさの余り居酒屋の雰囲気ですね今日は
呆れながらため息つくとインカムから呼び出し音
「ピピッ、明菜さんレジ前にお願いします」
「はい、向かいます」
あ、改めまして私は、穂風 明菜 (ほかぜ あきな)と言います。
大学二年生、特に目的も無く一般の四大に進んで、バイトしながら就職難をやり過ごそうと画策中です。
「あ、明菜さん、さっきからお店の外からあなたを見つめてる女の子が居るんだけど‥‥」
そう言って出入り口を指差され、視線をその先に向けると確かに女の子が居る。
目線が女の子と重なると、逃げるように離れていってしまいました。
「知ってる子?」
「いえ‥‥」
ちらりと見えた姿はまるで人形、ブロンドの髪を赤いカチューシャで後ろに流し、ファッション的なゴシックではないどちらかと言えば綺麗な黒のドレスの女の子。
ただ、そんな趣味のしかも小学生ぐらいのお友達は居ません。
「いらっしゃいませ!三名様ですね?、明菜さん案内お願い。」
「はい、此方にどうぞ、三名様七番テーブルです!」
「「「いらっしゃいませ!ありがとうございます!」」」
あわただしい時間は女の子の事をすっかり忘れさせてくれました、バイトの交代時間も‥‥。
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「お疲れ様でしたー」
「おつー!」
「明菜さんゴメンね、延長二時間も」
「気にしないでください、あの忙しさですから、途中で抜けるわけにもいきません、店長にバイト代弾んでもらいます、それじゃ!」
「うん、私からも伝えておくね、バイバイ!」
バイトが終わり駅のホームに立つと向かいのホームにあの時の女の子、神妙な顔付きで私をみるとお辞儀をしてくる。
訳も分からずお辞儀を返した瞬間でした。
トン
「おねえちゃん、ごめんなさい」
お辞儀で前のめりの背中をホームの向かいに居たはずの女の子に押されて‥‥‥
ファーン!
電車の警笛が大きく聞こえたときには、目の前が真っ暗になっていました。
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